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航宙機動部隊第三章・32

[515]  まっかつ  2007-07-18投稿
相手が悪すぎたのだ。
狂信的な教義を振り回し、その実現を目指して、大損覚悟で博打を仕掛けて来る何て、暴利目当てにターゲットを超短期で荒し回る投機業者にすら居る訳がない。
パレオス経済界がまともに闘える訳が無かったのだ。金儲け何て最初から眼中に無い敵手なのだから。
想定外の時、予測もしない方角から、考えも付かない戦法で奇襲攻撃を喰らったも同然だった。
しかも、共倒れすら辞さない太子党側は、それだけを成し得るに足る資本規模に恵まれている。
完全に失敗したとて、痛くも痒くも無い位の。
『君ももう知っているとは思うが、連中は早速出向社員の名目で、手下達を送り込んで来た。反抗的な社員や部署に目を付けて、圧力をかける為にな』
多機能表示眼鏡を外し、机の山からクリーニングペーパーを探り出して手入れを始めたアンドレア=ティレ=ロッツィの述懐は、沈痛を極めた。
『それに不満を感じた若手を中心に、もう大勢が退社してるんだ。私の同僚も一人、抗議して上に辞表を叩き付けている―あいつはもう戻らないんだろうな…』
ジョヴァンナ=バウセメロには返す言葉すら見付からなかった。
一つだけ把握したのは、長年言論や表現の自由を守り、時として蔑ろにされ勝ちな一般星民の尊厳を守護して来たパレオス中央通信社と言う要塞が、瞬く間に星間諸侯太子党勢力の忠実な奴僕となるべく、看板だけでなく中身も塗り替えられていると言う直視に堪えざる事実だった。
『しかも、連中は―要員の補充として幾つかの派遣会社を指定して来た―この意味が分かるかね?私見だが多分そこも既にフーバー=エンジェルミの手の中に有るフロント会社なんだろう…詰まり、誰かが去れば必ず奴等の部下が代わりを占めると言う仕組みだよ』
完全にチェックメイトされてしまった―そう言いた気にアンドレア=ティレ=ロッツィは大きな溜息を一つして見せた。
『この人権・社会部でも、もう六人が去ってしまっている。ここで君達にまで消えられたら―完全に太子党の都合だけで動く御用部署にまで堕落してしまうだろうな。だから、早まった真似はしないでくれよ?私も出来るだけ上に掛け合って見るから…最も、その私も何時までこの椅子に座り続けれるか分からないがね…』
パレオス中央通信社は、今やフーバー=エンジェルミの膝下にねじ伏せられてしまったのだ。

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