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MURASAME

[568]  あいじ  2007-07-20投稿
平将門?

まずこの男の話をしなければなるまい。
平将門…
朝廷に反逆し坂東(関東地方)に覇を唱え自ら『新皇』と称した平将門は西暦九百四十年(天慶三年)二月十四日、藤原秀郷、平貞盛軍に最後の決戦を挑み討ち死にした。
『太平記』巻十六『日本朝敵事』によると、この時、天から白羽の矢が飛来したという。
『将門記』はこの矢を「神鏑」と記し、『古事談』は敵将、平貞盛のはなったものであると伝える。
…将門は素より侘人を済ひて気を述べ、便り無き者を顧みて力を託く…と『将門記』が記したその人なりは一篇の怪異を生んだ。
切り落とされた将門の首級はさらし者にされていた。その首級は夜な夜な自らの体を呼び、「首つないで一戦せん」と叫んだという。
やがて、業を煮やした首級は自ら体を求め、飛び出した。
だが、怨霊の宿った将門の首級は力尽きて地上に落下したという。
(また、荒俣宏著の帝都物語において、平将門は千年の刻を経て東京を鎮護し続けた大地霊として描かれている。)
その場所が大手町首塚。現在の東京都大手町の将門塚とされている。(将門の墓所については関東各地に残っているが最も有名なものはこれであろう)
今もそれはビルの谷間にひっそりとただずんでいる…


帝都東京。
あるホテルの一室からその人物は帝都を見下ろしていた。
かなり年齢を経ていたが、その姿は美しく、まるで女性のような眩しさと紳士のような気品を兼ね備えていた。
アンドロギュノス(両性具有)と呼ぶにふさわしい。
「…何か、見えたのか?」
部屋の奥から声が聞こえる。女性の声だった。
「…帝都が血に染まるわ…招かれざる者達が蘇る…」
静かだが厳かな声が部屋に響いた。
「不吉じゃな。何を見たのかはしらぬが…のう、黒蜥蜴」
黒蜥蜴と呼ばれた人物が振り返る。額に汗が薄く出ており、呼吸も荒かった。
「…黒蜥蜴は舞台の名前…今の私の名前は美輪明宏よ」


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