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ロストメロディ

[463]  あいじ  2007-08-18投稿

「天使というのは二十世紀に出現した謎の生命体のことじゃ、その姿は千差万別人間のような姿のものからモンスターのようなものもいた。彼らの前には近代兵器も役に立たず人間は窮地に立たされた…」
老人が淡々と語るのを刹那は目を輝かせ聞き入っていた。
「だが、天使に対抗する人間も現れた。そいつらは高い身体能力と不思議な能力を持っていて、天使と互角に戦うことが出来た。彼らは戦使と呼ばれ人間の自由の為に戦った」
老人が話を切り刹那を見ると肩を震わせ感動していた。
「すっげぇ〜!やっぱりかっこいいな戦使って…なぁじいさん、俺も戦使になれるかな?」
「さぁ…どうかの」老人は長く伸びた髭をいじりながら穏やかな顔で答えた。
「うん…もうこんな時間じゃ、今日はもう家に帰れ」
見ると小屋の外は暗くなっていた。思いの他時間が経っていたことに刹那はようやく気づいた。
「もうこんな時間か…また来るな、じいさん」


「ただいま…」
刹那は玄関を開けるとよそよそしく家に入った。人気は感じられず部屋のどこにも明かりはついていない、刹那は奇妙な違和感を感じた。
「母さん…父さん…いないのか?」
その声は空しく反芻するだけだった。
「キミの両親はもういない、大金を渡したからね」
不意に奥の闇から人が現れた。綺麗な顔立ちの男だったが人間ではなかった。
「羽根…天使…?」その男の背中には羽根が生えていた。
刹那は玄関を勢いよく開け飛ぶように逃げ出した。
刹那は隣の家に駆け込みドアを叩いた。しかしドアが開くとともに鈍い痛みが刹那を襲った。
刃物を持った中年の女性が刹那を見下ろしていた。
「おばちゃん…なんで…」
「ゴメンね、刹那くん。君は天使様の生贄に選ばれたの。地域住民は義務としてキミを差し出さなきゃいけないの」
刹那はその場を駆け出しがむしゃらに走った。
「やれやれ…誰からも避けられ疎まれてるくせに…」
天使の言葉が聞こえたと思うと刹那の胸に激痛が走った。

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