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処刑生徒会長第二話・6

[885]  まっかつ  2007-08-23投稿
イジメは必要悪だ―\r

競争相手を減らすのにこれ程便利な手段はない。

村上シンジはそう心でつぶやきながら自分の席に戻り、カバンに教科書を詰め出した。

ナツを毎日校内掲示板でリンチしていたのはこの俺さ―\r

ここで、シンジは簡単な計算を始めた。

仮に全体のパイが10と仮定して、これを俺含めて10人で分けるとする―\r

俺の取り分は1―\r

たったの1だ―\r

だが、仮にパイが半分の5しかなくても分けるべき人数が2人にまで減ったら?

そう―俺の取り分は2.5にまで増える―\r

詰まり、国だの社会だのが繁栄する必要なんて大してない分けさ―\r

競争相手さえいなくなれば、幾らでも独占出来る!

競争原理を振り回し、それに適応出来ない人間に【弱者】の烙印を押し付け、容赦なく排除する。

だが、これは真実の半分も語っていないのさ―\r

村上シンジはにやりと笑った。

また、さっきの計算だ。

100点満点のテストでクラスの平均点が70点だとする。

自分の得点は丁度70点―これでは【その他大勢組】から抜け出れない。

だが、仮に平均点が40にまで下がったとしよう。

その時自分が60点しか取れなくても、周りから頭一つ飛び出た存在になれる―\r

そう。

イジメのかなりの部分がこのシステムで動いているのさ―\r

誰だって楽に勝ちたいに決まっている。

その為にはナンバー1から引きずり落とせば自動的に自分のポジションは上がるじゃないか?

大事なのはバレない事だ。

バレさえしなければ、この国では何をやっても良いからな―\r

村上シンジは詰め終えたカバンを机に載せ、椅子に座った。

そして―\r

『こんな簡単な仕組みが分からないヤツが―案外多いんだよな』

腹を抱えてくっくっくっと笑う声が、教室に響く。

シンジは何でも出来る男だったが、三つの物が決定的に不足していた。

否、欠如と言っても良い。

血と涙と体温が全くなかったのだ。

だが、それを補って余りある演技力が、彼を【人の痛みの分かる優しい正義感あふれる少年】に仕立て上げていたのだ。

ナツの葬式で―\r

『これがイジメだったら絶対許せない!』とテレビカメラの前で憤慨して見せたのも、巧妙なカモフラージュ工作だったわけだ。

当然、彼がナツを追い詰めた事を知る者はいない―いない筈なのだ。

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