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怪〜KAI〜

[652]  あいじ  2007-09-04投稿
座敷わらし?

下弦の月がゆらゆらと揺れる。
由良は暗闇に浮かんだつばめの微笑を見つめていた。いや、目を背けられなかったという方が正しいのかもしれない。
「想い煩わねば妖は存在しない。結局全てを理論づけて存在を創りだすのは人間なんですよ」
つばめの唇が月のように歪む。
由良は急激な虚無感に襲われた。


湯煙のせいだろうか、視界がいまいちはっきりしない。今夜は月が綺麗だし、せっかくの露天風呂なんだから絶景で楽しみたかったな、と弥生子は思った。
「まぁ、気持ちいいから良しとしますか」
露天風呂には弥生子の他に誰もいない。彼女の大きな独り言も湯煙に紛れ、やがて消えた。
弥生子は体をのばしつつ湯に浸かった。すると、足音のような奇妙な音が聞こえてきた。
トントン…トントン…
「?」
弥生子の耳にその音が強く響く。彼女は耳をそばだてて音のする方を凝視した。足音のようだがなにか違った音も混じっている、声のような…しかも笑い声、果てしなく無邪気で、それでいて残酷そのものの子どもの声
アハハハ…アハハハ…アハハ…
声は段々近づく。
弥生子の息がつまり肌がざわめく。途方もない寒気が彼女を包み込んだ。
「ねぇ…あそぼ」
耳元で声が聞こえた気がした。弥生子は振り向き辺りを見回すが誰もいない。
「なに…?」
あそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼあそぼ…

紛れもない子どもの声、弥生子の耳にまとわりつくように聞こえてくる
「ひっ…!」
湯船に浮かぶ子どもの四肢がゆらゆらゆれる。そして、血だらけの頭が浮かび上がった。
弥生子の意識はそこで途切れた。


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