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航宙機動部隊前史・9

[400]  まっかつ  2007-10-02投稿
宇宙連盟自体は飽くまでも中世型の緩やかな連合体をタテマエとし、銀河中に広がるあらゆる勢力の警戒と反発を刺激しない様にしながら、出来るだけ網羅する事を目指した存在であった。
よって、運用規約が設けられはしたが、いわゆる【憲法】は制定されず、専門的には《主権体連合》とも呼ばれる。
詰まり、太陽系連邦も含めて、独立国家・勢力同士の対等な連合以上の拘束力は持たなかったのだ。
よって、それぞれの勢力の自治はほぼ無条件に認められ、連盟自体はその内部に直接統治を及ぼす事は出来なかった。
代わりに、いち早く【公宙】の概念が提出され、各勢力の支配下に無い全ての領域は人類の共有地と位置付けられ、そのルールとして【航宙規約】が定められ、以後改正を重ねながら長らく人類宇宙の憲法の役割を果たす事になった。

更に、宇宙版インターポールとして星間司憲《スターポリス》が設置され、後には必要に応じて独立国の司法を嘱託されるまでに権限が拡大されて行く。
公宙上の紛争を裁く為には、宙事裁判所《スターレーン=コート》も設けられた。

経済面では、史上発の完全電子統一マネー《クレジット公貨》が華々しく登場し―そして悲惨な境遇を辿った。
元々賛否両論が激しい上に、発行直後ハッカー集団と投機業者の格好の餌食となり、いきなり価値を喪失し、史上発の宇宙通貨はそのまま宇宙時代最初の大恐慌の原因となったのだ。
最大の理由は、今だ原因がはっきりしないのだが、発行する側がこの通貨の信用に何の担保も用意していなかった事だ。
信じられない初歩的なミスだったが、彼等は宇宙連盟公認と言うネームバリューだけに頼り過ぎたフシがある。
地球時代ですら信用を失った紙幣はただの紙切れだ。
増してや、具体的な担保を持たない電子マネー等、言わば画面やホログラム上の数字の羅列に過ぎない。
宇宙連盟側は、凡そ五0年をかけて、あらゆる貨幣・貴金属等の準貨幣をこのクレジット公貨と交換し、集積した旧貨幣群との兌換化へと以降した上で、連盟債発行等の事業を充実させようと目論んでいた。
だが、結果は同じ五0年の内に、クレジット公貨自体が流通不能となり、連盟側は敗北を認めねばならなかった。

誰だって意味の分からぬただの数字と形ある財産とを交換したがる訳が無い。
結局宇宙統一通貨構想は頓挫した。

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