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航宙機動部隊前史・10

[412]  まっかつ  2007-10-02投稿
結局、統一通貨問題はうやむやにされたまま、各加盟国が勝手に独自の通貨を制定するに任せるしかなかった。

宇宙連盟は、実質【太陽系体制】と皮肉られる事しばしばだった。
確にその批判には少なからぬ事実が含まれてはいた。
行政の中心がアステロイド帯のアテナに置かれ、更に拡張された情報網の全ても、やはり同じアステロイドベルトの小惑星・ゼノンに建造された《ビッグサーバー》を必ず経由すべく設計されていた。
金融に至ってはあからさまに太陽系連邦の独壇場と化していた。
同連邦は今まで人類が採掘・製造した純金の九割を所有し、それを担保とした地球=火星合同貨《GM貨》は実質宙際経済唯一の基軸通貨として機能しており、宇宙三大証券取引センターの全て《月・火星・アステロイド小惑星ニューウォール》を所有し、何よりも地球系資本の力は絶大だった。
これに併せて、宙事裁判所大陪審・星間司憲総本部まで小惑星デロスに作られ、司法の中心をも握っていた。

宇宙連盟を作った側は、明らかに太陽系による支配体制を維持する為に、様々な手を打っていた訳だ。
金融・司法・行政・情報を巧妙に押さえた太陽系連邦は、だから宇宙連盟を思いのままに牛耳り、加盟諸国の上に君臨した。
だが当然、反発も大きくなった。
例えばアテナに常駐する官僚勢力だ。
宙際政治を担当する大会議《グランド=コングレス》は不便なシステムな上に、各国の思惑が対立してしばしば機能不全に陥った。
大体最遠で百光年も離れた場所が開催地に選ばれた場合、代表を送り込む自体物理的に不可能な国が沢山出て来る。
この問題は、現地の外交官に代表を兼ねさせたり、超時空場通信を使ったり、色々工夫はなされたが、不便な事には変わりなく、結果政治の行政依存体質を防ぐ事は出来なかった。
段々常設委員会が実権を持ち、そのほぼ全てがアテナに集められ―やがてアテナは宇宙連盟の首都だと、陰口を叩かれるまでに強力な権限を振るうまでになった。
権限はすぐに利権を呼び寄せ、そのどちらをも握った官僚は太陽系連邦との癒着を益々強め、彼等の巡らした様々な規制は、どう考えても太陽系連邦を優遇し、他の加盟諸国をないがしろにする様に狙われたとしか思えない内容に満ちていた。

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