携帯小説!(スマートフォン版)

トップページ >> 恋愛 >> 雪の華32

雪の華32

[639]  龍王  2007-10-06投稿

バシィィィ──

 部屋に響き渡る衝撃音。おもいっきり殴られた身体は吹き飛び、背後にあった椅子にぶつかる。

 背中と頬に激痛を感じながら黄藍が顔を上げる。
 目の前には、怒りで身体を振るわせる白藍の姿があった。

「────ッなん…でや……なんでや!!」

 怒りの表情とは裏腹に、発するその声は悲しみに満ちていた。耳を塞ぎたくなるような悲痛な声。
「──……お前との婚約を解消したかったからだ」
「だから……だからなんでやって聞いてんねん!! 何で解消させたかったんや! 何でお前が……朱斐……と……」

 黄藍が立ち上がり、口端から流れていた血をグイッと手で拭った。

「……朱斐のこと……好きじゃなかったんだろ? なら気にすることないじゃないか……俺と朱斐がどうなろうが」

 その言葉を聞いてカッとなった白藍がまた拳を振り上げた。

パシッ

 最初と違い白藍の拳は、防御され、手のひらで受け止められている。
 それでも白藍は、力を抜くことなく拳を押している。

「……うや……そうや! 朱斐のことなんか好きやない! 女としてみてない……オレが怒ってるんはお前にや!」
「───……」
「なんで裏切った? お前言ったやん? 朱斐を手に入れろって大事な駒やって……オレらは……同じ……だった」

 白藍の顔が歪み、拳の力も弱まる。

「オレら……二人だけやった。他はみんな駒でしか無かった……なのにお前は裏切った」

 黄藍は黙ったまま、白藍の悲痛な叫びを聞き続ける。

「……朱斐が好きなんか? オレを……置いて……一人で……行くんか?」

 ずっとずっと二人だった。
 汚い大人の中で生きてきた。

有益無益・嘘偽り・偽善。
綺麗なものなんか無い世界。
将来のための英才教育、異常な日々を送った。
息苦しく、心が死んでいくのが分かった……


でも二人だったから……
一人じゃなかったから───今まで



「なんで──お前やねん。なんでオレを裏切るやつが……よりによって……お前なんや……」

 ガクッと床に崩れ落ちる白藍を見下ろす黄藍。

 黄藍は無表情。その無表情から冷たさが漂っていた。


「いつまでも一緒にはいれない」
 

感想

感想はありません。

「 龍王 」の携帯小説

恋愛の新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス