以津真天
ええ、そうなんですよ
本当に驚いちゃって…いやびっくりしましたね…最初は。
最初はね、カラスかなとか思ったんですよ。
こう…すーっと頭の上を横切って、そこの…ほらあそこの電柱の上にとまったんです。悪戯なカラスだななんてソレの顔みたらもう…信じられます？
人の顔してたんですよ！人の顔！
ニタニタ笑って気持ち悪いのなんのって…おぉ嫌だ、嫌だ
それでね、私もうたまげちゃって、隣の奥さん呼び出して教えたんですよ。
でも、不思議なことに隣の奥さんには見えなかったらしいんですよソレが！
ソレはしばらくとまってたんですがね、ちょっと目を離した隙に見失っちゃいましてね、その日はそれっきりでした。
でも、次の日。
いるんですよ、その人の顔した鳥が…。しかも二匹に増えて…
次の日も次の日も…段々数がふえてきて…ふと奇妙なことに気が付いたんですよ。
その鳥ね…ある家の方をじーっと見てるんですよ。
その家？
ほら、そこのお向かいさん。
田所さんて云いまして、奥さんとお子さんの二人暮らしなんですよ。
なんか旦那さんが家出しちゃって…それっきりでね…。
とにかく、そっちの方見て何か奇妙な鳴き声だしてんのよ。鳥の鳴き声じゃなかったわ。人間みたいな声で…イツマデって鳴いてるのよ。
いやー…気味が悪かったわ。
それにしても、なにが「いつまで」なのかしら…？
本日未明、民家の壁から男性の遺体が発見されました。
遺体は相当な時間放置されていたらしくかなり腐敗が進んでいた模様です。
警察は遺体は三年前に行方不明となっていた会社員、田所義博さんの物と断定し、争った形跡があることから、殺人事件として調査を始める方針……
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