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天の詩?

[394]  Joe  2007-12-18投稿
男が一人立っていた。だが、その男を見た瞬間あの不安が、手足を凍りつかせた。
目の前の男は、奇妙な姿だった。
「連れて来い」
奇妙な男は、突然新八に言う。
言ってから、
ススス
とまるで風の様に近づいて来て、額をつけんばかりに顔を寄せ、
「女を一人連れて来い。」
そう囁き、真横にあった木に手をかざす。
「??」
何がしたいのかと思っているうちに、男の手の向こうの風が歪む。「化け物か。」
「フン、何とでも言うがいい、だが女は連れて来てもらう。」

と顔を離して「何よりも強く、何よりも深い者を。」
そこまで言うと、崖からでも突き落とす様に新八の背中をついた。「う。」
そこに放り込まれた瞬間吐き気の様な不快感が、胃の下辺りから口へとやってきて、消える。胃酸が鼻へと抜ける匂いにえきへきしているうちに、膝下からほとほとと、温いものを感じる。
薄い湯気のむこうで、女が手足をばたつかせ背を向けようとしていた。
(風呂?か?)
石の様な物で囲まれた場所だった。風呂だと判別出来たのは、足元の水の温かさと、何よりも背を向けた女が素っ裸だったからだ。
「お・・おい、ここは。」
話しかけようとすると女は、鼓膜が破れそうなほどの悲鳴をあげた。
慌てて肩を掴んだその瞬間、
ぐゎらり
と空間がずれた。
気づいた時には、女が膝の上に乗っている。「きゃ。」
女は胸を隠そうとしたがそのままの恰好で
どっ
と地面に落ちた。足元の新八が吹っ飛ばされている。
「ぐっ・・ふ。」
木の根に叩きつけられたが、相手がいない。衝撃で一瞬呼吸が止まったが、何とか気は失わなかった。
虚ろに見える右目に、再度空間の歪みが映る。
あの奇妙な男が地面からにじむ様にでてくる。女を見ると、片手を上げた。
女はまるで糸で操られているかのように、
ふうわり
と持ち上がり、男のとなりまで引っ張られていく。
男はその手を引寄せ強引に口をふさいだ。女の見開いていた目がトロリとなり力を失った。
すると男は、今度は女の体を丹念に撫で始めた。

と手を止めると、懐から真っ白の細長い布を取り出し何やらぶつぶつ呟いたかと思うと、布は女をひとりでに包み始めた。
見えなくなるまで包み終えると
ハラ
と地に落ちた。
新八は、我が目を疑った。女が別人の様に美しくなっている。白い着物に黒い髪を垂らし透き通る様な肌はまるで天人を思わせる。

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