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アジアンブロー -最上級の愛の物語- ・9

[516]  よこま  2008-01-02投稿
‐第5章 ある老人の話し‐

城下が賑わいを見せている頃、目を輝かせている数人の子供達がいた。

子供達は ある老人の話しを夢中になって聞いている。

その老人は、真剣な眼差しの子供達を見て 大きく一服してから ゆっくりとその煙を吐いた。

「まだ人間が現れる前の太古の話でな。
人間がこの世を支配する前には、この世には妖精がおった。
この世に生きる全てのものに妖精が宿っておった。
勿論、空気や水にもな。
そんな平和な世の中に突然悪い出来事が起こったんじゃ。

〈嫉妬〉と言うこの世の中から外されていた者が現れた。
〈嫉妬〉は次第に大きくなり、次々と妖精達を滅ぼして行ったのじゃ。

世の中は荒(すさ)んで行く一方でな
それでも最後まで戦ったのが、火の妖精と水の妖精じゃった。 」

老人はまた パイプをくわえた。

「お爺さん、それでどうなったの?」
「きっと、負けちゃうんだよ…」
「違うよね?お爺さん!」

老人は額により一層皺を寄せて、にっこり微笑んだ。
「負けてしまったら…わし等はおらんじゃろうな。」

「ほら…。」

得意気な少年の頭を撫でると、老人はまたゆっくりと話し始めた。


「 〈嫉妬〉は水の妖精にある〈嘘〉をついたのじゃ。
火の妖精が自分の仲間になってくれた…とな。

それを聞いた水の妖精はまんまと騙されて
悲しみの余り この世から姿を消してしまったんじゃ。

〈嫉妬〉は火の妖精を言葉巧みに誤魔化して、世の中が全て枯れ果ててしまう事を
心待ちに待っていたんじゃ。

火の妖精が〈嫉妬〉の〈嘘〉に気がついた頃にはもう、
時既に遅し。

この世は火の妖精独りになってしまったのじゃ。」

子供達の顔が強張った。

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