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MURASAME

[489]  あいじ  2008-01-04投稿
天魔降伏?

空気が冴える。
全身の細胞が大光明に危険を報せているのが感じられた。
(以前手合わせした時…奴は『鬼』により傷を負っていた…今この姿で奴には…可王には勝てまい…」
可王が小鉄と政宗を重ねて構えた。それと同時に可王は大光明との距離を一気に詰め、刃を振るった。
「ぐぅ…!」
大光明は咄嗟に関孫六を抜き小鉄を抑えた。しかし二刀の刃は別の生き物のようにしなり動いてその間合いに隙を与えなかった。
「この間合いならば!お前の術も使えまい!」
「それは…どうかな?」
迫り来る二刀の生物を片手で受け止めると大光明の口がブツブツと真言を唱え、片手で印を結んだ。
「不動明王火界呪!」
大光明の手から赤い炎が放たれ可王の全身を燃え上がらせた。
可王が思わず退けぞる。それと同時に大光明は斬り込み関孫六の刃が虚空を舞った。
「ムゥ…」
ボトリと嫌な音がして可王の右腕と小鉄が大地に落ちた。
可王は政宗を一蹴するとその風圧で炎を消し去り燃え上がっている自身の右腕を拾った。そして何事もなかったかのように腕を元有った場所につけた。腕は二・三度ピクピクと動いたかと思うと切断面が接着された。
「その程度か…」
「く…!」
再び刃が舞い、大地が震える音と風を切る音のみが東照宮内に響き木霊する。可王は無限ともいえる体力を駆使し大光明の身体を徐々に責めつつあった。
不意に大光明の動きが止まった。
「……!?」
「この身体に産まれ二百余年…漸く死ねるようじゃの…」
「何を…!」
大光明が関孫六を構え可王に向け突撃する。しかしその疾走は弱々しく可王は正面からそれを受け止め、二刀の刃を大光明の胸へ突き刺し抉った。
「終わったか…」
「未だ…じゃ…」
大光明の全身から光が放たれ胸に突かれた小鉄と政宗にひびが入った。
「これは…!?」
「天魔降伏…」
二人の体を中心に日光東照宮全体が光に包まれやがて…

消滅した。

天魔降伏 終

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