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処刑生徒会長第四話・10

[647]  まっかつ  2008-01-12投稿
先の生徒会長が二桁に登るスキャンダルでリコールされた段階で、大川アヤノは会長室書記長としてナンバー3の座にあった。

そしてリコール騒ぎを収拾して生徒会を説得し、総選挙を告示させ、自ら運営委員長に就任して内乱すれすれの状況でどうにか平穏裡にそれを成功させる事が出来たのも、ひとえに彼女の人望・手腕が大きく働いていた。

彼女は梅城政権の産みの母と言っても良かった。

そのために梅城ケンヤですら彼女には一目置き、校則を曲げてまで彼女の着物姿での登下校・及び校内生活を保証している。

梅城ケンヤ・港リリアを除けば、この第三中学校で生徒会長を務める資格のあるのは彼女だけだったろう。

だが大川アヤノは先会長の辞任に際して周囲の勧めには応じず、自ら旧政権の幕引役を演じる事を選んだ。

更に新会長就任を果たした梅城ケンヤの慰留も辞退し、次政権への引き継ぎを終えると全ての公職を返上し、生徒会を去った。

旧政権の無実の役員の助命と廃されていた茶道部の再建の二つを条件に―\r

今や茶道室の主となった大川アヤノはあくまでも一般生徒の一員として振る舞い、あらゆる政治活動は愚かそれについて話す事すら避けている。

一種の隠居だ。

だが、それでも賢人としての名声や識見は引退した後になってこそいや増しに輝く。

人気投票をしたら、ひょっとしたら梅城ケンヤですら負けるかも知れない。

それだけの評判が、彼女にはあった―\r













『私がせっかちなのは認めます』

梅城ケンヤは座布団の上の正座を崩さないままにそう赤面して見せた。

『あなたには隠し立ては出来ませんな』

さすがの独裁者も、ここではあらゆる作為が通用しない事を認めるしかなかった。

『隠す必要などないのです』

自ら立てた抹茶を口にしながら、大川アヤノは気品に満ちた微笑を見せた。

『ここは―そう言う場所ですから』











『梅城会長』

飲み終わった陶椀を脇に置いて、大川アヤノは尋ねた。

『あなたの多忙さの残り半分を解いて差し上げましょうか』

『お願いします』

ケンヤは素直に頭を下げた。

アヤノの助言は正確で含蓄深いだけでなく、野心や打算がないだけに、それに従って外れた例しがないからだ。

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