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ばぁば 八話

[415]  レオン  2008-01-30投稿
ありがとう
それだけじゃ
足りないよね。


祖母の桐のタンスを整理すると、キレイな花模様の箱が出てきた。
中には通帳と、私宛の手紙が入っていた。

━━誕生日おめでとう。時が経つのは早い物です。お前ももう18才。自分の道は自分で決めなさい。この通帳はお前の通帳です。好きに使いなさい。人様に迷惑かけないよう律義に暮らしなさい。
悲しい時は、働いて忙しくしなさい。そうすれば涙は出てこない。強く生きて下さい。何事にも負けず、強く生きて下さい。━━

祖母からの最初で最後の手紙だった。
通帳には、いつから貯めたのか83万も貯められていた。



私が高2の夏、祖母が店先で倒れた。

学校から慌てて病院へ行くとすぐに、病院の先生に呼ばれた。

「あの、お父さんかお母さん、親戚の方と連絡とれますか?」

「父も母もいません。祖母の身内は私だけです。」

「そうですか…。実は中川さんの病名ですが、胃癌の末期です。病巣の転移も見られます。もう手遅れです。抗癌剤治療でも後半年持つかどうか…。余命宣告も本人の希望でしてあります。」

私は息が出来なかった。

ばぁばが死ぬ…。
嫌だ嫌だ嫌だ。

「余命は長くて半年…」

ばぁばの嘘つき!!
たいした病気じゃないって!!
一人ぼっちは嫌だよ
置いてかないでよばぁば。


祖母は青白い顔でベットに寝ていた。
次の月には店を建たんで、祖母の抗癌剤治療が始まり、私は学校と病院を行ったり来たりしていた。

心も体もボロボロだったけど、祖母には私しかいなかった。
治療費の為に、色んなバイトをした。祖母が私の為にしてくれた様に。

祖母はたまに調子のいい日には決ってこう言った。

「いつも ありがと」


〜最終話へ続く〜

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