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航宙機動部隊前史・39

[468]  まっかつ  2008-02-20投稿
銀河元号一三一一年・宇宙史上最悪の大恐慌が起きたのは特筆に価する。
属に《超大恐慌》と称されるそれは、元々はそれまで二0年以上続いていたマネー投資ブームの頓挫と言う形で現れた。
その最大の原因は、《開発予定予備信用投債》と言う実に長たらしい名称だが実体はあやふやな金融商品市場の爆発的拡大にあった。
端的に言えば、それは無尽蔵と言って良い未開拓の銀河の恒星系や資源を半ば無理矢理財産評価して投機の対象とした物で、しかもそれに将来の科学技術や政治情勢を加味して値段を調整・更にはその取得権を転売を重ねて代理取得権・代理取得権取引権・代理取得取引信用所有権と、本来なら有り得ない権利関係の構造が、ただ目先の儲けの為だけに次々と設定され、ネット集合体やファンド会社に欲望を煽られた中央域市民はこぞってこれに飛び付き、最盛期で一七00兆クレジット公貨が飛び交うお化け商品と化した。

だが、飽くまで全ては架空の話しの積み重ねなのだ。
地球時代と同じく、金融の抽象性が現実から乖離する度合いに応じて常識では考えられない利益が投資家の手に転がり込み―それが最早自分の抽象性すら支え切れない程巨大化したと同時に、一気に崩壊した。
この超大恐慌によって、クレジット公貨も連合債も価値が暴落し、中央域も宙際連合もその持てる最後の力を失い、更に悪い事には―各宙邦にもその影響は波及した。

例えばカラ宙邦では僅か二年の間にGDPの七0%に当たる損失を出した。
開発予定予備信用投債(プレプレ債)に連動して、国内証券市場の株式が軒並み大打撃を受けたからだ。
新しい政体・宙邦群はこの事態を深刻に受け止めた。
彼等は富国強兵にマネーは当てにならないと結論した。
それは国力や経済の実体を反映しないだけでなく、一部の投資家や一片の情報だけで高騰・暴落の危険を常に抱えると言う脆弱な構造を宿命付けられていたからである。
宙邦群はより確実な国力の基盤を求めた。
そして、彼等は意外と身近にその対象を見付けた。
それがヒト―詰まり人的資源であった。

教育を振興し・福祉を充実し・医療体制を整え・国民の質を高めて国家収入を増やす―これが、彼等の到達した《人的資源中心主義経済》の考え方だった。
正に人は石垣・人は城な訳だ。
ここに宙邦群に新しい国民《星民》が誕生した。

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