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航宙機動部隊前史・40

[526]  まっかつ  2008-03-02投稿
だが、この政策も程なく限界点を迎えた。
人口は指数関数的に増加すると言うマルサスの教説は完全に裏切られた。
何故なら、人類の平均寿命が地球時代では考えられない程延びていたからである。
一組の夫婦が精々七〜八0年の生涯で二人か三人の子供をもうける地球時代と、一二0年はある一生で良くて同じ位の出産しかしない戦邦時代とでは、人口増加のペースには大きな開きが出来る。
しかも、地球時代とは較べ物にならない人権と知識を手にしている宙邦星民は、当然子を産む機械扱いされる事に激しく抵抗した。
仮に政府が婚姻と出産に厳しい義務や規制を課したら、彼等星民はより緩やかな政策を取る他国や中央域へと逃亡する力があったし、事実そうしていた。
では、母胎の負担を減らす為に人工出産を行おうかと各宙邦が試みれば、宗教界からお咎めが入る。

深刻な人手不足―地球時代とは全く逆の理由で、宙邦群が勢力拡大が出来なくなってしまったのは、皮肉と言うしか無かった。
自国で調達出来ない物は他者から収奪するしか無い―各宙邦がこの手っ取り早くて乱暴な結論に到達する迄に、そう時間はかからなかった。
当然、自国のヒト―人的資源を狙われ無い様に備えを固める必要性も年々増大するのは理の必然であった。
こうして、宙邦同士の軍備拡大競争は益々激しくなって行く。

銀河元号一三六八年・一早く軍事大国化を果たしたスコピオン宙邦は一0・一0艦隊を実現し、猛威を振るった。
一万隻の機動部隊が十個・合計一0万隻―この画期的な軍編成は瞬く間に列強の模倣する所となり、これが後戻り出来ないチキン・レースの直接の発端となった。

軍拡競争は勿論兵器面にも及んだ。
当初固定式要塞砲として開発された超加速誘導システムの小型軽量化及び出力増強が、やがて磁性体を亜光速で射出するSCV・Uランチャーとして結実し、銀河元号一三九五年・これを搭載した始めての戦艦《ダレイオス》が完成し、以後、亜光速実弾は戦艦の標準装備となった。
更に中距離兵器としてプラズマ収束技術が応用され、銀河元号一四0四年・二億度ものエネルギーをぶつけてあらゆる物を《分解》してしまう《ゼウスサンダー》システムが主に巡洋艦に装備される。
反面、防御兵器にも次々と新体系が生まれた。
その花とも言うべき物が電磁膜システムの発達であった。

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