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星の蒼さは 32

[514]  金太郎  2008-03-08投稿
もし、天使がこの世に存在するならば、それはきっとこのような姿なのだろう。ハルは動けなかった。
ただ、その美しさに見惚れていた。
強敵との戦いも、最早蚊帳の外。
狂的に白い翼は、広く大きく、そして妖艶。
初めて連れていってもらった銭湯で、母の影から見た知らない若い女性の身体。その時もこのように心が乱れた。
鉄の塊を食い破って羽化したそれは赤く燃ゆる炎の中でも、なお白かった。

「本当にWWなのか……?」





(絶望………?)

少尉はまだ奴に絶望を見いだしてはいないようだ。

(どちらかというと…希望……)
「違う」

クロイツはすぐさま否定した。
クロイツの目には絶望だけが映っていた。
絶望とは「希望」を失うことである。己の希望だけで生きる人間が希望を失う。即ちそれは「絶望」であり、「虚無」であり、「白」である。
我々はなんと皮肉な兵器を創りだしただろうか。
カリプソの数百人のクルーを喰らい尽くした天使はまだ物足りなそうに微笑む。
その姿にクロイツは恐怖した。

「化け物め」

クロイツはその時、奴が本当に殺意を持ち自分達を見ていることに気付いた。

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