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少女と麒麟と青い空 3

[629]  ゆうこ  2008-03-10投稿
手を取って、冷たさに驚いて、引っ張りあげられて、足が地面について…
ガクッと膝が折れた。
コンクリートに尻餅ついて、眼を見開いた。

私…本当は怖かった?

はっきり言って、恥ずかしかった。腰が抜けた。私の「覚悟」の甘さに、赤面してもしたりない。私はキリンを見上げる勇気もないまま、じっとコンクリートの染みを見つめた。
まるでそれが重要であるかのように。

「死ぬってさ、ある意味テンションが必要なんだよね…」
人事みたいに(まさに人事だけど)言ってるキリンに無性に腹が立つ。
その勢いで、立ち上がった。

「さあ、さっさともっといいとこに連れていってよ。まさか嘘じゃないでしょ?」

キリンは素直に頷く。

「まあね。飛び降りるならあそこしかないよ。たださ…トリさんに足りないものがあるんだよね」
「足りないもの?」

「遺書」

遺書…。そういえば、書こうとさえ思わなかった…なんでだろう?
でも考えるより先に言葉が出た。

「必要性がないもの」

キリンは驚いたみたいだった。人を食った笑みが完全に消える。

「なんで?じゃあなんで死ぬの?…世の中の仕打ちへの仕返しじゃないの?…おたく相当変わってるね」

「孤独なのは世の中のせいじゃないもの。自分のせいじゃない?そういう風にしか生きてこれなかった自分のせいでしょ?…人のせいにする気なんか最初からないよ」

そうだ。
その通り。今、初めて理由がはっきりした。
孤独が嫌なんじゃない。そういう風にしか生きられない自分が嫌なんだ。…驚いた…人に話すと自分が見えてくるなんて。
「へぇ。なるほど…トリさんてよくよく…いや、まあいっか。じゃあ、行く?死にたいんでしょ」
「もちろん」

…やっぱり変な人。
ううん、変な二人。

こんな綺麗な空の下で、生き生きと「死ぬ」話してるなんて。

かたやキリン。
かたやトリ。

どっちも世界にとって、害がない…けど薬にもならないのかも。

私がにやにやしているとキリンが首を傾げた。
そのことにまた、笑ってしまった。


面白い、と感じていた…


灰色の校舎を抜けて、キリンが前を歩く。
目的地が近くても遠くても構わない。
授業が続いてる教室は振り返らない。
先生に呼び止められたら…今の私なら、追いつけないくらい早く走れる!

キリンの背中だけ見て、歩いた。


変な人。


振り返りもしない。
私がついてくること、疑いもしない。

…さあ歩こう

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