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少女と麒麟と青い空 5

[588]  ゆうこ  2008-03-12投稿
先の言葉を促すようにキリンを見ても、彼は何も言ってくれない。

「…ごめんなさい。一人で逝く勇気がないなら、自殺する資格なんてないのにね。自分でも解らないの。なんで…いて欲しいのか」

そうよ。
そもそも、孤独を知ったから死のうと思った。
今も孤独に違いはない。でも、キリンが去るのを見るのは…耐えられないほど痛い気がする。

「ここまで付き合ったなら、最後まで…そういうことでしょ」
吐き捨てるように言うキリン。苛立ってる?
何で?
本当にこの人、読めない
「嫌なら付き合わなくたって…」

瞬間、頬に痛みが走った…叩かれた事に気付いたのは、少し後。
呆然と見返す私に、キリンは燃えるような目で凝視していた。
優しさなんてこれっぽっちもない。

「見えっ張り!意気地無し!偽善者!いつまでそうやって…解らないフリし続けるつもりなんだ?君は…」

時間が止まったように立ち尽くす私の腕を引っ張って、キリンは地面の見えるギリギリの所まで私を押しやった。

そして、今は僅かに穏やかさの戻った目を私に向けた。
痛いくらい力のこもった手の間接が白く浮いている。

「バイバイ」


キリンは軽く、触れるか触れないかの力で、何もない空間に私を押し出した。

落ちる刹那、彼は私に囁いた。

私は後ろ向きに落ちて行った…視界から消えていくキリンを見たのが、最後だった。




どうしてそんなこというの…?




その疑問が消えたのは、私の意識が消えたから。





…男の子が笑ってる…



あれは……キリン…?



でも笑ってるのに、悲しい目をしてる…


学校…?


屋上…キリン…



待って…待って!

キリン、待って!

ダメ、フェンスを越えてしまう…!




飛ばないで?





キリンの揃えた両足が、コンクリートの縁から離れた瞬間、私は乱暴に揺り動かされていたことに気付いた。

慌てた担任の顔が飛び込んでくる。


私は跳び起きた。

そして、担任がギョッとするほど強く、その肩を揺すった。

「先生!…キリンを知らないですか?飛び降りて……そこ…から」

心底、薄気味悪いものでも見るように、邪険に私を振り払った。

「勝手に抜け出して、こんなところで居眠りして…言うに事欠いて何を今更…」

「知ってるんですか?」


私は、教師の話す内容を夢のなかの出来事のように聞いていた…。




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