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Mind Adventure 9

[484]  籬 規那  2008-03-17投稿


妖需が帰って来ない。


この辺りの水辺の魔物は、夜行性で毒を持っているので、川からある程度離れているとはいえ、2時間以上も帰って来ない、というのは何かあったと見て間違い無いだろう。


まだ辺りは薄暗い程度だが、危険が無い訳ではない。


一族の中でもエリートで、生まれた時から軍事訓練を積んできたジンと同等の働きをする妖需の事だ。

魔物にやられたとは考えにくいが、この時世だ。

何があるかはわからない。





やや焦り気味に茂みを掻き分ける。


そこには、黒髪の女と重なり合うようにして、妖需が倒れていた。


「妖需……!?」

父に教わった手順で応急処置を行うが、2人共意識が完全に無い。


体が濡れていることから、一度水に入った事はわかるが、不幸中の幸いと言うべきか、水を飲んではいなさそうだ。


だが、もうすでにやることはやった。自分ではどうにかできそうにない。

足の一部が水に浸かったままだった女を陸まであげる。

大きな布に隠れていた足があらわになる。


と―――\r


碧い、鱗。



数秒間、呼吸を忘れる。

心臓が早鐘のようだ。



どうして
どうして亜人がここいる……!?


外傷のない妖需は毒でも飲まされたのだろうか?
頭の中が混乱するばかりでうまく考えがまとまらない。



その時、茂みを掻き分けてメシアとジンが現れた。


そういえば、別れる時にジンに「見つけやすいから」とか言って、使い魔の一部をちぎって服に付けられた覚えがある。


そういう事か。

あんなに慌てていたのに、人が来た途端に急速に冷静さが戻って来るのがわかる。


女は意識を失っているからとりあえず安全だが、亜人がこの場にいることには変わりないのだ。





風邪に靡いて髪が肘の辺りに触れる。


遠い昔の、決意の印。



曲げたくない


逃げたくない



そんなのただのきれいごとだ。


だけど

人は弱くて


一人で生きていけないくらい弱いから




思いを、形にする。


忘れないように

逃げてしまわないように




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