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リミット THREE 参

[524]  ゆうこ  2008-04-01投稿
非常口の青白い光しかない、暗い廊下を二人は歩いていた。

リノと翠は不安そうに、ほとんど寄り添うように先へと進む。

行き先は保健室だ。

「俺が一人でいって、湿布かなんか取って来てもいいけど」
と翠が言うのをリノは一蹴した。
こんな訳のわからない状況で一人にはなりたくない。
行く、と言い切るリノを止めなかった翠も、内心同じ思いだったのだろう
「私の膝ならたいしたことないと思う…先に出口に出た方が良くない?」
この言葉に、今度は翠がだめだ、と言う。

「こんな状態でいきなり外なんて駄目だ。でるなら万全じゃなきゃ…」

確かに、と素直に頷いて今、二人は歩き続けている。
翠って、体育会系っぽいのに案外賢いのかも。
こんな時に結構失礼な事を考えている自分に、おかしくなった。
それに…カッコイイと言えなくもないし。

翠の日焼けした顔をじっと見つめながら、値踏みしていると、翠が嫌そうに睨む。

「じろじろ見るなよ。…俺、見つめられ恐怖症なの」
「なにそれ、変!」

くすくす笑いながら、足を踏み出した瞬間、翠の手がさっと押し止めた。
「待って。……何か…いる」

暗い廊下の先に、確かに何か人影のようなものが見えた。

「あれ…人…?」

「解らない」

影は動かない。
暗闇に慣れつつある二人の目に、それは少し腰の曲がった人間に見えた。
「人…だと思うわ」

「何してるんだろう」

翠の生唾を飲む音が妙に響き、リノは思わず後ずさる。

不意に、影が向きを変えた。

「こっちに…来る!」

リノの本能が、逃げろ、と叫んでいた。
翠はさっとリノの前に屈み込み

「乗れ!」

リノは迷わず、翠にしがみついた。

影は今や勢いを増し、奇妙にギクシャクした動きで二人に迫っていた。

翠は走った。
リノにも聞こえる程、息が上がる。
来た道を真っすぐ戻り、元いた明るい教室に飛び込む。

「早く!」

リノを降ろし、両側の扉にある鍵をかける。
リノは痛む膝に鞭打って近くの机を扉に押し付けた。やらないよりはマシという程度のバリケードを築く。

「翠!大丈夫…」

振り返った刹那、バアンと扉が叩かれた。
悲鳴をあげるリノを翠は背後に引き寄せた。

「俺が引き付ける…扉が破られたら全速力で逃げろよ」

扉は軋み、鍵の砕ける音がした。



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