携帯小説!(スマートフォン版)

Forgot-2

[567]  黒和  2008-04-08投稿
トラウマを負った彼の記憶は、必死にそれを治そうとした。
 
具体的に言えば、母親のことを忘れようとしたのだ。
楽しかった事も
苦しかった事も
そして実際に、全てではないが、彼は母親との記憶を忘れていった。


他にどうしようもなかった、と言えば言い訳になる。
しかし、人間というのは都合よく造られている。
 
病気のところは治せばいい。その原因ごと消してしまえ。
 
つまりは、トラウマの原因となる、記憶ごと消してしまえ、ということ。


そう、そうして母親との思い出を消すことによって悲しみを乗り越えた。
 
もう、彼はあまり思い出せないのだ。
母が、どんな声だったか
どんな話をしていたのかさえも
 
辛くもあるが、仕方ない。
繰り返しになるけど、他に選択肢もなかったのだ。


生活は大きく変化した。
食事は祖母が作るようになり、他の家事も、家族全員(彼と兄、父親に父方の祖父母)でこなすようになった。
週末には、父方の伯母が来て、家事を手伝ってくれさえした。

 
そうして新たな生活に慣れていき、悲しみと共に記憶も薄れていったのだった。

感想

感想はありません。

「 黒和 」の携帯小説

公募投稿作品の新着携帯小説

利用規約 - サイトマップ - 運営団体
© TagajoTown 管理人のメールアドレス