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リミット THREE 11

[533]  ゆうこ  2008-04-08投稿

何も見えない…。

目と鼻の先に教室が見えていたのに、全ては闇に消えてしまった。
いや、消えたように見えただけだ。

リノは満身創痍の身体を引きずり、その頭はスイッチの事でいっぱいだった。

お願いします…神様!
私に翠を助けさせて下さい!

食いしばった歯で、唇を傷つけたことさえ、今のリノは気付かなかった。床にピタリとくっついて手を突き出しながら、教室を探っている。
手に縛り付けたままのガラスが、リノリウムの床をおそらく傷だらけにしているだろう。

リノは金属音が近づいて来ない事を祈りつつ、時折なにかを投げるような振動が起こる度、翠の無事を願う。

自分に出来ること。
しなくてはいけないこと…明かりを…捜す!

リノは暗闇のなか立ち上がり、よろめきながら手探りを続けた。

指先が、壁に触れた。
手を押し当てながら、横へとずれていく。

とうとう、求めていた扉の感触!
引き戸を開け、壁づたいにスイッチを捜す。

早く…早く!

苛立ち、焦りながらそこかしこに触れた。

わからない…どこなの!
ギ…ギギ……

影が近づいてくる。
あいつにはこっちが見えているんだ。

心臓の音が高まり、冷や汗が背中を伝う。
今、襲われたら…。
二人とも、アウトだ。

翠…!大丈夫よね?
お願い、お願い、お願い……

誰に祈っているのかわからない。
唇から自然に漏れた呪文のように、リノは呟き続けた…。

お願い お願い お願い


お願い お願い ……



プラスチックの突起に触れ、指で弾いた。


お願い!!!


パッと明かりが瞬いた。
整然と並んだ机が目に飛び込み、突然の眩しさに戸口で立ち尽くし…、振り向いた。

「翠!」

喉が割れる程の絶叫。
リノは薄い光に照らし出された階段に一歩を踏み出した。

影がいた。

喉仏に箒の柄が突き刺さりながら、呻いている。足の骨が折れたのか、右足の膝から下が不自然な方向に曲がっている。

肉の臭いに引き寄せられる獰猛な犬のように、リノに向かってギクシャクと歩を進めていた。

翠…翠は…。

近づく影のシャツに自らの黒い血液が飛び散り…また、それとは明らかに違う、深紅の血が腹部を下半身を、染めていた。
嘘…翠……嘘、嘘…

動くなかった。



影が…近づく…。

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