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ワンダーゲート最終

[611]  ゆうこ  2008-04-19投稿
「あの人みたい…」

前を横切る女性をみて、美羽はそっとリノに耳打ちした。


結局、美羽は全てをリノに打ち明けた。
幽霊の声のこと。
幽霊の求めること。

そして彼の声に従って、女性……彼の妻を捜し当てたのだ。

女を見つけた瞬間、頭のなかの彼の感情…戸惑いや悲しみ、それら全てを上回る愛しいという感情が、爆発するのを美羽は感じていた。

殺して欲しい。

そういった彼の真意を、リノはうまく誘導して聞き出していた。


学校で、二人は初めて出会い、恋に落ちた。
若い恋にも関わらず、心変わりをしなかった二人はある誓いを立てた。

どちらか一人が死んだとき、もう一人も後を追う…と。

馬鹿馬鹿しい約束、と人は笑うかもしれない。
けれど彼はそれを信じていたのだ…。

結婚して二年。
二人はあっさりと「彼の事故死」という事件によって引き裂かれた。

そして…。

彼の想いは学校に残り、彼女の来るのを待った。
二人が出会った時にも雨が降り、事故で死んだその日も雨だった、と彼は美羽の口を借りて語った
「で…彼女が後を追わないことが、あなたには許せないのね?」

静かに語るリノに、美羽は頷いた。

二人は捜索を始め…彼の教えた住所にまだ住んでいることがすぐにわかった。

そして。


美羽の心には、悪意を含む殺意はこれっぽっちも湧かなかった…。
恐れていた殺意の代わりに、とめどない愛しさと悲しみが胸に突き刺さる
「…もういいって…彼は言ってる」

美羽の言葉に、リノは首を振る。

「そんな。せめて彼女から話しを聞きましょ?」

しかし、彼は頑なに心を閉ざした。

「だって…」



その時、女性の後ろから飛び付く女の子が…目に入った。

そのこはフッとこちらを見ると…不思議そうに首をかしげ……美羽に向かって太陽の日差しのような微笑みを投げかけた。

「あれって……あの子はもしかして…」

リノは美羽を振り返った

美羽の両方の瞳から、涙が伝い落ちた。


「…うん…」


言葉にしなくても、リノと美羽の想いは…いや幽霊の想いは、同じだった

あの子のために、彼女は生きることにしたのだ。


しばらく後ろ姿を見送って……声は消えた。


ありがとう。


そう呟いて。

帰り道、美羽はリノに

「ねぇ…どうして声のこと疑わなかったの?」

リノはクスッと笑って、


「だって知ってるもの…不思議な扉が開く事がある…って」


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