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航宙機動部隊前史・45

[563]  まっかつ  2008-04-20投稿
銀河元号一五0三年・この時点で勢力を張っている宙邦は九国で、その合計戦力は艦船八八二四六00隻・兵員一二億五七00万人・国家予算に占める軍事支出は平均すると一二・三%だった。
これが一五0七年には艦船合計一六0三八九00隻・兵員三四億三一00万人・軍事支出の国家予算比二二・五%、
一五一一年に至っては艦船合計三三八二一000隻・兵員一00億六五00万人・軍事支出の国家予算比三三・七%にまで拡大の一途を辿ったのだ。
四年毎に、艦船数で二倍・軍事支出比率で一0〜一一%・そして兵員規模は三倍ずつ増えていた事になる。

どの宙邦も人的資源を奪うべく、守るべく、危険な冷戦と軍拡路線を突っ走り出したのだ。
各国列強の反目は深まる一方で、それは星民達への更なる不合理かつ理不尽な統制政策の追加をもたらした。
それぞれの宙邦がアイデンティティーの確立の大号令の下、独自の言語・単位・習俗・紀元・歴史を上から《人工的》に作り上げ、それを教育として自国民へと強制し、排他的な民族集団を形成しようと目論んだのだ。
何故なら、独自の民族としての自我が一端出来上がってしまえば、仮に他国に連れ去られたとしても、容易に向こうに馴染めない。
そう―分割された言語や習慣や歴史的記憶を刷り込んどけば、それは自国星民が敵の戦力になるのを阻む《壁》となる。
又、星民同士が国を越えて宙邦体制に反抗する危険を根源から防ぐそれは防波堤の役割を果たした。

だが、逆から言えば、これこそが国家同士の意思の疎通に致命傷を与え、僅かながら残っていた平和への望みの息の根を絶ってしまったのだ。
既にネット集合体は解体され、そこで使われていた《宇宙時代のラテン語》英語は早くも廃れ、国境を挟んだ他者とコンタクトを取る事が困難になっていた。
その上で各宙邦は、ばらばらの言語や暦を一から創ってまで使う事を押し進めたのである。
そして銀河元号一五一0年代後半には、彼等は経済金融分野まで完全分断してしまった。
為替相場を廃止し、国家間の株式・通貨取引を全て止め、挙句の果てには交易ルートを封鎖して、現物・資源の国際移送すら拒否してしまうのだ。
こうして各宙邦は、情報のみではなく経済に置いても孤立化を推進し、それぞれが中世国家みたいな閉鎖された自給自足体制を完成させてしまった。

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