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ネイム

[581]  未熟  2008-05-02投稿
風が吹き荒れる。
大量の風。
外は台風だ。
しかし、普通の台風とは違う。
いや、これは台風とは呼べない。
そう、これは暴風だ。
「助けてくれ〜!」
男が大声をあげている。
しかし、暴風は男の声をかきけしてゆく。
どんなに大声をあげようが無駄。
どんなに助けを求めても無駄。
「ひ〜!」
暴風がどんどん男、砂原鉄多(さはらてった)に近付いてくる。
「わかった!どんな情報でも話す!だから、助けて!」
その言葉に、暴風は歩みを止める。
そして、暴風が話しかけてきた。
いや、正確には暴風の中心に人がいる。
そいつが話したのだ。
「森羅(しんら)という男を知っているか?」
「森羅?知らない!本当に知らない!」
鉄多の声は震えている。嘘はついていないようだ。
「そうか。ならお前にようはない。」
その瞬間、暴風は、その威力を弱めていった。
そして、風がやんだとき一人の長身の男が現われた。
そう、この暴風は男がつくりだしたものだったのだ。
人間が機械も、なにも使わずに風をつくりだせるわけがない。
いや、正確には違う。
本人が触れる風、そよ風は走るなどの行為でつくれる。
だが、暴風なんてつくりだすことはできない。
普通なら。
そう、この男は普通ではないのだ。
しかし、鉄多にもたいした驚きはない。
普通でない事象を見た人間のリアクションではない。
恐怖で気でも狂ったんだろうか。
男は、鉄多に背を向け歩きだす。
その瞬間
鉄多が地面にふれた。
すると、男の足に砂がくっついてゆく。
いや、正確には砂鉄が。
砂鉄は凄い勢いで、上に浸食するようにくっついてゆき、あと数秒で男は息もできなくなるだろう。
そう、鉄多が驚かなかったのは当然だった。
こいつも普通ではないのだから。
「もうそこまでくっついたら、風でも吹きとばね〜ぞ!死ね〜!」
「‥‥‥」
「もう喋ることもできないか!は〜はっは‥‥‥。」
鉄多の笑いは突然止まった。
なぜなら、
「なんで、なんで俺ネイムが、風使いなんかにやぶられる。」
鉄多の言うとおりの事がおきたからだ。
男にまとわりついていた砂鉄は、ゆっくりと地面にもどってゆく。
「お前が、ネイムを鍛えてなくて助かった。俺の鉄のネイムのほうが少し強かったみたいだな。」

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