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奈央と出会えたから。<146>

[612]  麻呂  2008-05-08投稿
* * * * * *

聖人は、あたしを母の勤めるお弁当屋さんの直ぐ近くまで送ってくれ、



あたしは一人でお弁当屋さんへ向かった―\r





お母さん‥怒ってるかな‥‥。



何て言おう‥‥。



ただ一言―\r



“ごめんなさい”って言えば済むコトなのに―\r



その一言が―\r



なかなか素直じゃない、あたしの口から旨く言えたなら―\r



その後の言葉も、きっとスムーズに言えるだろうって―\r



そんなコトを考えながら―\r



あたしはゆっくりと歩いていた―\r





『奈央!!』



名前を呼ばれた、その聞き覚えのある声に―\r



あたしは後ろを振り向いた―\r





『お母さん???』


驚いた事に―\r



そこには、両手に買い物袋を持った母が、



にっこり笑って立っていた―\r





『奈央。今日は、学校終わるの随分早かったのね?』



母が悲しそうな、優しい笑顔で言った―\r




『お母さん‥‥。今朝は‥‥あたし‥‥言い過ぎちゃって‥‥ご‥め‥‥。』



母の優しい笑顔を見たら―\r



言いたかった言葉が―\r



言葉にならなかった―\r



言いたい言葉が山ほどあるのに―\r



言いたい言葉を考えていたのに―\r



言いたい言葉の数々は、



ただ―\r



あたしの頭の中で、


ぐるぐると空回り―\r




『実は母さんもね、今日は仕事、午後からサボっちゃった!!』



母は、そう言って笑った―

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