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朝野と夢野──本来の自分──5

[348]  京野一芽  2008-05-10投稿
 概してぼくの三半規管は正常に機能しているのかわからない。というのは、結局はうまくバランスを保つものの、その事前には必ずピサの斜塔のように傾いているからだ。
ぼくを健常者として見ている多くの人々は、ぼくをちゃんと見ていなかったり、ほとんど無き者にしていたり、たとえ見ていてもぼくが直立しているときにだけそうしていて、危うく倒れそうになっているときには別のことにかまけていたりする。
つまり、そういったことが原因だ、とぼくは思う。
これに対して、少しでもぼくのような人間のことを注意して見てくれる慈悲深い人々は、それぞれ、優しい人とか、憐れな人とか、天才だとか、私も見習いたいとか、そういったことをふと口から漏らす。
しかしまた、こんなことをも言う、「憶病、泣き虫、へたれ。辛気くさい、馬鹿、クズ、暗い、目障り、狂っている、被人格淘汰(とうた)者、純然たるヒューマニスト達のお荷物、人間失格、虫、近寄るな、出ていけ、あっちいけ、さようなら! いつ死ぬの? もう死んだら? 死んじまえ!」

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