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緑の丘 (6)

[392]  レオン  2008-05-13投稿
私と晃司はしばらくの間、メールだけの関係だった。

暇な時にメールし合うだけ。
友達と言っても実際はメル友止まり。

別に実際に会いたいとは思わなかったし、お互いそんな事 には触れずに2週間過ぎた。
メールでだけだが、少しずつ晃司の事が分かってきた。

仕事は自動車整備士。
趣味はダンス。
好きな食べ物はラーメン。

何だか、私と音楽の趣味や感性が似ていてメールでの会話は弾んだ。そんなある日、いつもと違うメールがきた。



━━━━━━
本文

ねぇ、俺らってこのままじゃメル友だよね?
俺は、千恵美と実際に会って話してみたい。ダメかな?

もし、OKなら明日の18時に緑の丘で待ってるから来て。
━━━━━━



メールの返信はしなかった。

もし、実際会って晃司がすっごく嫌な奴だったら…。

そう考えた時に、あの日の嫌な記憶が蘇ってきて、私は吐気がした。

私は理菜に電話をした。

千恵美:「もしもし?理菜どうしよう…。晃司に明日会いたいって言われた。」

理菜:「会えばいいじゃん!!」
千恵美:「でも、会ってイメージ違うってなったら…。」

理菜:「てか、千恵美だって本当は晃司先輩に会いたいって思ってんでしょ?」

千恵美:「別に私は…」

理菜:「嘘だね!最近の千恵美はいつも晃司先輩の話しばっかじゃん。自分の気持ちに正直になればいいじゃん。」


理菜の言葉に「はっ」とした。 私は晃司に会ってみたいと、そう思っていた自分に気が付いた。





夕日が沈む公園の、緑の丘と呼ばれる小さな丘の上のベンチに、一人の男が腰掛けて煙草を吸っているのが見える。
私は胸が痛いぐらいにドキドキで、ゆっくり丘へ向う階段を登った。

途中でその男が煙草を消して、キョロキョロと辺りを伺ったので、私は思わず身を屈めてしまった。

階段を登りきり、ベンチへ近寄ると、男は私を見つけて、優しい笑顔をした。

「初めまして。本物の千恵美。」
男はそう言うと更に優しい笑顔をした。

何て綺麗だろう。
夕日に照されて男が輝いて見える。


「初めまして。本物の晃司。」

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