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箱のなか13

[539]  ゆうこ  2008-06-13投稿
「アズサ!」

亮とアズサが二人、声を揃える。

「大丈夫よ、何かあったら電話する。携帯持ってるし…って、持ってないや…手提げ、そういえば無くなってる…」

アズサは初めて気付き唇を噛んだ。
亮も愕然とする。

「俺も…最初、コックリさんやった部屋に鞄ごと置いてきちまった!あの時みんなの鞄、ベッドの端に置いたんだよな」

アズサはアッと声をあげた。

「そうだった…私が無意識で置いたからみんなつられちゃって…。わたしまるで疫病神だね…」

香月は自分のデニムの僅かな重みが携帯であることを思い出した…が、二人が持っていないのなら意味はない。

「大丈夫、なにかあったら大声で叫べば聞こえるよ…ひ」

悲鳴が聞こえたみたいに…。

そうつづけそうになった舌を、香月は思い切り噛んだ。

「よし。お前も気をつけろよ?雅也を見つけたら叫べ!飛んで行くから」
香月はコクリと頷いた。


かくして、香月は雅也が出口に向かっていると想定して一階部分へ。

二人は二階と三階を捜すことにした。

香月も見つからなければすぐに上に向かうと約束する。
アズサを捜して走り回って、自分の居場所さえ、出口さえ解らなくなってしまっている。

一人と二人は全く違う方向へと走って行った…。




香月は亮の電灯の光が消えるまで見ていたい欲求を押さえ、振り返ることなく一階へと続く階段を探し続けた。

その間中、頭のなかは回っている。

しかし今、重要なのは雅也がどこにいるか、ということ。

それだけだ。







「アズ、離れるなよ」

「うん…」

アズサは亮の裸の上半身を見て、申し訳なさそうに返事した。
血に濡れた自分のパーカーを思い出し、ギュッと目をつむる。

凄く気持ち悪かった…。

暗闇に慣れてきた目は、電灯と月の僅かな明かりでも人の表情を映し出すことが出来た。

亮は自分を恐れていない…。

そのことが、何より嬉しかった。


亮は、背後からついてくるアズサに注意を向けつつ、雅也を捜していた。



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