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箱のなか15

[505]  ゆうこ  2008-06-14投稿
香月は走っていた。
暗闇もガラスも怖くない…何かに追われるように走っていた。

階段を見つけ、駆け上がる。

その時、甲高い悲鳴が聞こえた。

アズサ…?

アズサが、叫びながら走っていた。

「アズサ!ここにいるよ…早く…」

チカッと電灯が輝き、その光は迷うことなく香月に向かってくる。

その姿を見て、香月は驚いた。
着替えたはずなのに、亮の服はまた血で汚れていたのだ。

「アズサ…あんた…」

アズサは息を切らしながら首を振る。

「違うの!これは雅也の…」
「雅也が見つかったの?じゃあ…」

アズサは慌てて香月の口を塞いだ。

「いいから。説明するから静かにして…あたしたち、雅也に殺される」


その凄まじい剣幕に押されて香月はかつてはナースステーションらしきブースに入りこんだ。
アズサが震えながら戸を閉める。

香月は頭を抱えた。

「なんなの?説明してよ…もう何がなんだか」

アズサは深呼吸して、しゃがみ込んだ。

「信じられないかもしれないけど…あのコックリさんでとり憑かれたのは雅也だったのよ」

アズサの言葉に香月は唾を飲み込む。

「雅也を刺したのはたしかにあたし。でも致命傷だったのに…雅也はさっきあたしと亮に襲いかかって来て……」

「そんな!亮は…」

「…ごめん…ごめんね、香月…亮は…あたしを逃がす為に雅也に…」


泣きながら、くずおれたアズサを、香月は見下ろした。


ふふふっ



唐突に唇から漏れた忍び笑いに、アズサはぎょっとして濡れた顔をあげた
「全く…あんたって。たいしたもんだよ、本当にさ。猿芝居はもうおしまいよ」


アズサの目が光った。

「…やっぱりね…あんたを最後まで騙せるとは思ってなかったよ、香月」
アズサはさっきまで泣いていたとは思えぬ程、ふてぶてしい態度で戸口にもたれた。

「わざとらしく右肩をさすったり、とり憑かれたふりしたり…なかなかだった。でもね、ずっとひっかかってたんだよ」

アズサは促すように笑う
「まず、あんたはあたしにアカリと話をさせなかったね。聞きたい事あるって言ったのに。取ってつけたようにアカリを追っ払った」

香月は一息ついて、続けた。

「何故なら…」

「全部作り話だから」


アズサが静かに続けた。

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