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星の蒼さは 78

[452]  金太郎  2008-06-17投稿
広場の噴水に腰掛けて、二人は寄り添っていた。

「アキ、ごめんな」

今日、いや、この十分間で十回目のごめんだった。

「いいの」

十回目のこのセリフ、不思議と嫌にならない。
何度でも繰り返したいやり取りと言うか、なんだかハルが自分の手元に戻ってきたみたいだ。
それとも、最初からハルはずっと?

傲慢だと言われてもいい。

ハルは私のハル。
じゃあ私はハルの……?

どうなの?目に聞いてみようと覗き込んだハルの目はもう『蒼』くはない。
東洋人らしい黒目だ。

十一時。すっかり登り切った太陽はギラギラと輝いて摩天楼を照らす。

「さっきの人達の事、聞かないの?」

あれ程の事がありながら、全く聞き出す素振りを見せないハルにアキは自分から聞いてみた。
だが、ハルの反応は意外なものだった。

「聞かねー」

「え?」

「つらいと思って」

アキの頬のアザを撫でながら、ハルは言った。

「つらそうな顔して喋らなくていいよ……また落ち着いて、それでもやっぱり話したかったら話してくれよ。な?」

肩をすっと引き寄せて、普段頼りないハルは今日、誰よりも強そうだ。
肩にも格別大きなアザがあるが、我慢した。

まるで恋人みたいだ。

二人ともそう思ったのか、同時に顔を完熟トマトの様に真っ赤に染めた。




「……レベッカちゃんは?」

「………あ」

その頃、突然消えたハルを捜し疲れたレベッカはマクドナルドでポテトを自棄食いしていた。



月首都[アルテミス]の大統領府のとある一室で、二人の男女が人目を忍んで密会していた。

『大統領閣下は?』

「寝室でお休みに」

『そう………。ここのところ激務だったから……中国との交渉はまとまったの?』

「はい、さすがは月の最高権力者であらせられるエドワード閣下です。劉大使を相手に終始優勢を保っておいででした」

『そう、だったらもう用は無さそうね』

「ええ…それより、例の[兵器]は今何処に?」

『ニノミヤの報告だと、ニューヨークにあるわ。どうやら自我も生まれたみたい』

「自我まで?順調ですね」

『そうね、怖いぐらい』

女は窓の向こうの母なる星、地球を見た。
礼儀正しい男は手帳をしまうと出口にたって一礼した。

「それでは、私は失礼しますね。大統領秘書がボイラー室にいるのは怪しいですから」

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