星の蒼さは 80
「どうしたんだ!?アキ!?」
「アキちゃん!!」
「頭割れそう!……『赤』がたくさん…頭に流れ込んで……」
やけに明るい夜だった。
パラソルが設置された為、地球には一定以上の光が降り注がなくなったが、アポロと出会った今日は違った。
妙に晴れた空に、ルビーのような赤い月。
アキが突然、苦しみだしたのは、その時だった。
「[エリア0]に戻りましょ!」
レベッカの提案でエリア0に帰る事になり、呻くアキを抱えて夜のニューヨークを走りだした。
ビルの間からライトアップされた『自由の女神』が月を背景にしてのぞく。
独立戦争での激しい戦いの末、手に入れた自由(フリーダム)。
アメリカ合衆国の総てをその身を以て体現した白き『彼女』。
The Statue of Liberty
「アキ、ほら!自由の女神だぞ」
「ん……」
『彼女』は微笑んで三人を見下ろしていた。
透き通るような白い肌にはまだ浅いアメリカ合衆国の歴史でさえも濃厚に溶かし込んでいる。
その時、ハルは見た。
『彼女』の背後の月が一瞬真っ赤に輝くのを。
気のせいだったかもしれない、しかし、ハルには見えたような気がした。
この『光』をハルは知っている。
あの晩、アキと初めて出会った大晦日の東京で見た、東京タワーをどろどろに溶かし、人体を溶かし、魂さえも溶かした『赤』い光。
色白な『彼女』が真っ赤に照り映え、街を行く人々が一斉に『彼女』を振り向く。
「なんだ?」「女神が…」
ハル達のすぐ隣で携帯電話でなにやら話し込んでいた中年の男性も携帯電話を取りこぼし、口を開けて光を見ていた。
「ステーツ(合衆国)が………」
ハルにははっきりと聞こえた。
咄嗟にハルはアキとレベッカを両腕に抱えてすぐ近くの路地に転がり込んだ。
「キャッ!!」
レベッカが声を上げたが、無視した。
一拍遅れて
さっきまでいた大通りが、吹き飛んだ。
路地裏から見た大通りは、さながら映画のスクリーンといったところか。
『スクリーン』の中で、人は火だるまになりながら右から左へ、木の葉のように舞っていく。
かろうじて電柱に掴まって立っていたさっきの男性は、風に乗って飛んできた赤い乗用車に直撃し吹き飛んだ。
人、物、総てが赤い光に蹂躙され、打ち砕かれ、空に巻き上げられていく。
アメリカ合衆国が敗れた瞬間だった。
「アキちゃん!!」
「頭割れそう!……『赤』がたくさん…頭に流れ込んで……」
やけに明るい夜だった。
パラソルが設置された為、地球には一定以上の光が降り注がなくなったが、アポロと出会った今日は違った。
妙に晴れた空に、ルビーのような赤い月。
アキが突然、苦しみだしたのは、その時だった。
「[エリア0]に戻りましょ!」
レベッカの提案でエリア0に帰る事になり、呻くアキを抱えて夜のニューヨークを走りだした。
ビルの間からライトアップされた『自由の女神』が月を背景にしてのぞく。
独立戦争での激しい戦いの末、手に入れた自由(フリーダム)。
アメリカ合衆国の総てをその身を以て体現した白き『彼女』。
The Statue of Liberty
「アキ、ほら!自由の女神だぞ」
「ん……」
『彼女』は微笑んで三人を見下ろしていた。
透き通るような白い肌にはまだ浅いアメリカ合衆国の歴史でさえも濃厚に溶かし込んでいる。
その時、ハルは見た。
『彼女』の背後の月が一瞬真っ赤に輝くのを。
気のせいだったかもしれない、しかし、ハルには見えたような気がした。
この『光』をハルは知っている。
あの晩、アキと初めて出会った大晦日の東京で見た、東京タワーをどろどろに溶かし、人体を溶かし、魂さえも溶かした『赤』い光。
色白な『彼女』が真っ赤に照り映え、街を行く人々が一斉に『彼女』を振り向く。
「なんだ?」「女神が…」
ハル達のすぐ隣で携帯電話でなにやら話し込んでいた中年の男性も携帯電話を取りこぼし、口を開けて光を見ていた。
「ステーツ(合衆国)が………」
ハルにははっきりと聞こえた。
咄嗟にハルはアキとレベッカを両腕に抱えてすぐ近くの路地に転がり込んだ。
「キャッ!!」
レベッカが声を上げたが、無視した。
一拍遅れて
さっきまでいた大通りが、吹き飛んだ。
路地裏から見た大通りは、さながら映画のスクリーンといったところか。
『スクリーン』の中で、人は火だるまになりながら右から左へ、木の葉のように舞っていく。
かろうじて電柱に掴まって立っていたさっきの男性は、風に乗って飛んできた赤い乗用車に直撃し吹き飛んだ。
人、物、総てが赤い光に蹂躙され、打ち砕かれ、空に巻き上げられていく。
アメリカ合衆国が敗れた瞬間だった。
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