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死体放棄少女・八

[620]  黄粉  2008-06-26投稿
優子は、普段着のままで学校の体育館へと向かう。

麻里奈は苦しんでいるんだ。

あのアパートに放棄状態にあった死体は、麻里奈が殺した死体だなんて私思ってないよ。

きっと麻里奈は誘拐されただけだ。そして昨日誘拐犯から逃げ出して私に電話した。



推理をする名探偵のように、優子はぼんやりと考えていた。


麻里奈は苦しんでいるんだ・・・

優子は、また自分の中で囁いた。



結局体育館に来るまでに、男には会わなかった。
「ちゃんと読んでくれたのかな?」

優子は独り言のように呟いた。

別に来なくてもイイけどね・・・。

広い体育館に響く一人だけの足音。

優子はひどく寂しい気持ちになった。

そして、その場にしゃがみ込み、橋本を待った。



その時、もう一つの足音が体育館に響いた。

「麻里奈?」

優子は振り返る。

「やあ。」

そこにいたのは橋本ではなく、頭のボサボサな男だった。

「なんだ・・・手紙ちゃんと読んだんだ。」

橋本ではなかったが、何故か安心した。優子はまたしゃがみ込み、目をつむる。

「優子。麻里奈をまだ待つつもり?」

男は陽気な口調で言う。
「麻里奈に会いたくないの?なら来なきゃよかったのに。」

男は優子の腕を掴み、出口へと連れていこうとした。

「やめてよ。私、麻里奈に会わなきゃいけないんだよ。」

しかし男はやめなかった。

「悪いのは麻里奈だ。優子が関わることじゃない。だから、帰ろう。」

優子はとなる。

「なんでそんなことが言えるの!?麻里奈は私の親友なのに!親友を助けるのは当たり前でしょ?」

「優子は少し優し過ぎる。だから関わっちゃいけないことにも関わっちゃうんだよ。」

優子は男の手を力いっぱい振り切り、体育館の中へと走る。

「麻里奈ばっかり悪く言わないでよ!!」

その時、何か人影が見えた気がした。

「・・・!」

「優子!危ない!!」

男は体育館中に響くような声で叫んだ。

「痛!!」

優子の肩に痛みが走った。

「ああ!」

肩を見ると、血がついていた。

しかし、そんなに痛くない。そもそも優子は怪我なんてしていたかった。
「優子?大丈夫?」

優子は見た。

男の腹に、包丁がぶっすりと刺さっているのを。

優子は声にならない叫びをあげながら、男にへと駆け寄った。

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