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星の蒼さは 84

[456]  金太郎  2008-06-28投稿
「ハル、ハル!しっかりして」

「っ痛―――ッ」

どれくらい寝ていたのか、レベッカとアキに揺り起こされて目を覚ました。

ニューヨーク市内はひどい有様だった。
東京事変の時より出力を下げたのか所々で人の気配がする。
ただ、ある者は瓦礫に頭を挟まれてなお死に切れず、またある者は太陽光が生み出した熱風に肺を焼かれ、もがき、悶え、しかし死ねない。

地獄。

あの晩、アキと出会ったあの白い雪の降りしきるあの晩に、全てを吹き飛ばした赤い[光]

「アキ、レベッカ……あおかぜに戻ろう」

「え?」

遠くを見つめながら、ハルは言った。

「俺は軍人だ。月軍と戦う。戦争が終わればこんなことにはならない。月を倒して、こんな酷いこと終わらすんだ」

「ハル……」

「それでいいな、アキ」

月から来たアキに尋ねた。

「うん」

自分の故郷を倒すと語ったハルに、なんの戸惑いもなく賛同したのは何故か、アキは自問した。

『蒼』だから?

ハルからは全く邪念が感じられない。

憎しみがない

客観的に考えている。というのも少し違う気がする。

その先にある『希望』を見ているからか。

ここまで蒼く、希望に満ちた人だからか。

「待って」

歩きだした二人をレベッカが止めた。

「行くのならエリア0に行きましょう。力になれるはず」







(月軍、我が軍の包囲網を突破しつつあります!)

(ロサンゼルスの月軍主力艦隊も移動を開始したようです)

(カーター中佐の第9小隊全滅!駆逐艦グラハン轟沈!……第3小隊が退却の許可を願い出ています!)

旗色は明らかに悪い。

瓦礫の山のせいで陸上兵器が設置できず、アメリカ軍のお家芸、物量作戦が展開できないのだ。

WWにおいては圧倒的に引けを取るアメリカ軍に、WW戦で勝ち目は無い。

特に、あの黒い謎のWW。凄まじい火力で、アメリカ軍WWを蹂躙している。

「…エヴァンス中将、援軍は来ないのでしょうか……」

滝川はすがるようにエヴァンスに尋ねた。

「情報が錯綜しておる。暫し時間がかかるな」

「戦線はあと十五分も維持できませんわ!」

包囲網をかけた自分等が逆に窮地に追い込まれるとは……

「タキガワ」

誰にも聞こえないようにエヴァンスはそっと滝川に話し掛けた。

「この際、もう隠し事はすまい。貴殿等が求めるエシュトノート………」

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