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奈央と出会えたから。<195>

[569]  麻呂  2008-08-17投稿

『拗ねてる訳ねぇだろ。ガキじゃあるまいし。』



カチッ――



ぼそっと一言呟いた聖人は、煙草に火を点けた。



『奈央ちゃん。もう、コイツは天邪鬼と言いますかねぇ‥‥。

どうしてこう素直じゃないんやろな。

未成年の分際で、親の私の前で堂々と煙草なんぞ吹かしやがるし。

何てったって、私のバイクを無免で乗り回すんやからな。

恐らく、学校内でもとんでもないワルなんやろな。』



聖人のお父さんの言った言葉は、確かに正しいコトだとは思うケド‥‥‥。



聖人にだって、良い所がいっぱいいっぱいあるんだから。



だって――



聖人は決して“ただのワル”なんかじゃないし。



凄く――



他人に対して思いやりがあるし。



絶対に――



自分より弱い者を苛めたりなんかしないもん。





『おじさん。聖人は“ただのとんでもないワル”じゃないです。』



あたしは思わず呟いた。



『ははは。そうかぁ。分かった。

聖人‥お前、奈央ちゃんにここまで想われて、幸せなやっちゃな。

奈央ちゃんの事は、大切にしてあげるんやで。』



『さっきから、いちいちうるせぇよ。

親父にんなコト言われなくても、俺は奈央のコト、大切に思ってるし。』



そう言ったトキの聖人の目は、真っ直ぐあたしの目を見てた。



ずっとずっと、あたしの目を見てた。





『まぁ‥‥な。俺も聖人位んトキは、やんちゃやったけどな。

やっぱり“血は争えない”って言うけれども、ほんまにそう思うわ。』



そう言った聖人のお父さんの表情が、



少しだけ寂しそうに見えた。





『おっ。奈央。この里芋なんまら、うっめぇ〜〜!!』



聖人が、母の作った“旨煮”を食べながら言った。



『あは。ありがと。そう言ってもらえたら、お母さんも喜ぶと思う。』





『親父!!奈央の母さん、弁当屋で働いてんだぜ。

今度、昼飯んトキ、弁当買ってやれよ。』



不意に聖人が、思い出した様にそう言った。

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