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星の蒼さは 112

[500]  金太郎  2008-08-25投稿
「……なに?」

喧騒に包まれるあおかぜの艦橋で戦闘オペレーターの美樹がポツリと呟いたのを滝川艦長は聞き逃さなかった。

「どうしたの、美樹」

「いや、あの、レーダーの故障だと思うんですが…」

「?」

「これ…“艦”ですか?」

美樹が正面の大画面に映し出したレーダーを見て、一同は絶句した。

巨大。

北西に5キロ、戦場の規模を考えると目と鼻の先に現れた巨大な影。

それは現在のアメリカ軍の実質トップ、エヴァンス中将の乗艦グレイプニルや、半年前のロサンゼルス攻防戦で撃沈された“要塞”の異名をとった航空母艦プレーリーの比ではない。

滝川は艦橋の窓に走り寄り、北西を見た。

まさに島。

空飛ぶ島だ。

5キロしか離れぬ空に島が浮かんでいるのだ。

何故今まで気が付かなかったの?まさかステルス機能を有している?

「機体識別出来ました!!」

通信兵の一人が画面を叩いた。

「【神聖ロシア帝国】の戦艦と判明!」

「ロシアですって!?」

滝川は耳を疑った。

神聖ロシア帝国は国連にも月にも中立の立場をとっていたはずだ。

まさか、アメリカの危機に乗じて一気に葬ろうというのか。

中世の時代、アメリカと、ロシア帝国の前身であるロシア連邦は【冷たい戦争】なる戦争を繰り広げ、地上に覇を唱えんと互いの武を競った。と歴史の教科書で習ったのを覚えている。

その戦争は【カク】という兵器の保有数が決め手となったと聞くが……

まさか、その決着をつけようと言うのか。

だとすれば勝ち目は無い。


“島”はワシントンの上空をすれすれで飛び、巨大な影を落とした。
近くに来るとその大きさは計り知れなかった。

艦尾が見えない。



宣戦布告も何も受けていない、完全に奇襲。

いや、勝てば官軍。罷り通るというのか。


そして、そこで初めて意外な事に気付く。


動揺しているのは我が軍だけではない?


中国も、その圧倒的な存在感に気圧され、たじろいでいる。武器を向けているWWの姿もあった。

両軍共に第三勢力の到来に開いた口が塞がらないのだった。

そして、戦場とは思えない静寂の中、一機のロシア製の細身のWWが現れ、上空100メートルの辺りで停止した。

それは静かに語り始めた。

<我々は神聖ロシア帝国近衛騎士団である>


凛とした口調だが、かなり年若い印象を受けた。

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