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奈央と出会えたから。<213>

[588]  麻呂  2008-09-09投稿
* * * * * *

教室から出て行った渋川は、



どうやら保健室に、タツヤの様子を見に行った様だ。



『ねぇねぇ。タツヤだけどさ――』



さっき渋川に言われ、



保健室までタツヤに付き添ったサチヨが、



ちょうど教室へ戻って来た。



サチヨの話しぶりでは、



タツヤのケガは、



見た目の出血の多さ程、大した事は無いと分かった。



よかった。



それを聞いて、あたしは安心した。



だって、もしタツヤの鼻が折れてたりなんかしたら――



聖人の処分だって、


それ相当なモノだと思うし――





『ねぇねぇ!!

みんな知ってる?!
渋川が最近、なんで様子がオカシイのか。』



サチヨは、早く話したくてウズウズしている様で、



目をキラキラ輝かせていた。





『渋川ったら、“教頭”になりたいからって、上のヤツらに媚びを売る為に、“熱血教師”を演じてるみたいよ。』



渋川の前では、イイコぶってるクセに――



陰では、簡単に渋川のコトを裏切ったりして――



本当は心の中でバカにしてるんだね?!


得意気に話そうとするサチヨの姿を、



聖人は少しあきれ顔で見ていた。





『サチヨ。さっき渋川にチクッたのはオマエだろ?!』



聖人の言葉に、



サチヨは一瞬、サーッと顔色が変わったが、



直ぐに、とっさに考えた言い訳としては上出来なセリフを吐いた。





『あら。あたしは、聖人とタツヤのどちらの味方もした訳じゃないわ。

ただ、2人の仲裁役には、やはり大人の力が必要かと思っただけよ。

ケンカをして、どちらが怪我をしてもおかしくない状況で、
あたしの判断は的確だったと思いますけど?!』





サチヨったら。



やっぱ、こういうトキの逃げは上手いんだから。





『サチヨ。オマエ、渋川みてぇな腐った大人になるなよ。

オマエの将来、目に見えてるぜ。』



聖人は、サチヨにそれだけ言うと、



それ以上は何も言わなかった。

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