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タイムテレフォン4ー未来ー

[586]  hiro  2008-09-19投稿
「おーい。夕食まだか?」
と、兄の声が聞こえた。ちょうど、受話器を下ろしたところだった。
「まだ5時だよ。それより、この電話すごいよ!」
「おお、届いたのか。オレにも使わせろよ。」
「だめ!これを買った目的は、今終わったんだ。」
「そうか、自分は元気だったか?」
「まあ。だけどこれ以上この電話は使用禁止!」
「分かってるけど、もったいないな、5000万も出したのに。」
「これ以上、過去に触れてはいけない。」
オレンジ色が、窓から染み込んでくる。
「あの公園へ行こう。」
無意識のうちに、兄にこう言っていた。公園に行かなくては。
「何でだ?いい大人が2人で公園に行って、楽しいと思うか?」
「散歩だよ。たまには息抜きってことでさ。」
これには、大切な意味があった。公園に行く必要がある。

20分程歩いたところで、小さな公園に着いた。
兄は、大きな山の頂上に辿り着いたというような、爽やかな顔をしている。
歩いて来る途中、兄に本当のことを話したからかもしれない。
この公園の木の下に『過去からの贈り物』が埋まっている、と。

大きな桜の木の前に立った。もう散りかけている。
桜のピンクも、夕陽のオレンジに染まっている。
地面に落ちた花びらをかき分け、2人で土を掘り始める。
「小さい頃は、よくここに来たよなあ。親父と。」
と、兄が沈みそうな夕陽を見ながら言った。
「夕陽のオレンジだけは変わってない。」
「確かに。きれいなオレンジのままだね。」
30センチ程掘ったところで、小さな缶が出てきた。
錆びていて、開けるのに5分程かかってしまった。
兄と顔を見合わせ、同時に缶の中を覗き込む。
「これだけ?」
兄が残念そうに言った。中には、小さく折り畳まれた3枚の紙が、寂しそうに、ポツンと入れてあった。

数分後、兄は、目から涙を流した。自分も思わず涙を流した。
こぼれた涙が、乾いた紙を濡らしていく。
ー続くー

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