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タイムテレフォン5ー現在ー

[622]  hiro  2008-09-19投稿
「おーい。昼食まだか?」
と、兄の声が聞こえた。ちょうど、受話器を下ろしたところだった。
「もう5時だよ。夕方だって。」
「ああ、寝ぼけてた。って、おいおい。」
「どうかした?」
「何で泣いてんだ?」
「ああ、これは、目が痛くて…」
そこで、玄関から音が響いた。父が帰ってきたのだ。
父がソファに腰を下ろした。昼間のことを思い出したが、すかさず肩を揉みにいく。
「おい、いきなり何だ。何の風の吹き回しだ?」
父は、怒鳴ることはなかったが、変な目でこっちを見ている。
オレンジ色が、窓から染み込んでくる。
「3人で、タイムカプセルを埋めない?」
無意識のうちに、父と兄に言っていた。未来に向けて手紙を書かなくては。
紙とペンを半ば強引に渡し、3人で手紙を書いた。
父はいやいやだったが、兄は楽しそうに書いていた。

20分程かけて書いたにしては、かなり短い文章だった。
自分は、
《未来の自分へ、電話ありがとう。おかげで、肩もみという親孝行ができました。なぜか安心しました。》
と書いた。気持ちを込めて書いたつもりだ。
兄の手紙を覗き込むと、
《未来の俺へ、俺と翔太と親父で、楽しく暮らしていますか?今は楽しく暮らしています。》
と書いてあった。また泣きそうになってしまう。
父の手紙を覗き込むと、
《未来の翔太たちへ、翔太、肩もみありがとう。初めての親孝行だな。嬉しかったぞ。兄ちゃん、昼寝ばかりしてるんじゃないぞ。頑張ってるか?そして自分、翔太たちを一人前の大人に育てられていますか?》
と書かれていた。言葉にならないような思いが込み上げる。
父は、恥ずかしそうに手紙を伏せた。
ついに涙を流してしまった。
明日は、父の旅立ちの日だ。

今、公園の、大きな桜の木の下に立っている。
夕陽のオレンジを浴びながら、大きな思いの詰まった、小さな缶を埋める。
未来に向けて、思いを託した。
ー終わりー

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