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星の蒼さは 120

[625]  金太郎  2008-09-21投稿
左胸を赤褐色に染めたエドワーズの血液は既に凝固し、それ以上シーツを汚す事はなかった。

自分が彼に初めて穿った8ミリの穴。

傷は心臓を通って一直線に彼を貫いており、一撃で愛する人の生命を奪った。





これは愛。

これ程醜く狭い世界に最愛の人をひとりにさせて置けなかった。

ロサンゼルス空港で初めて目が合い、コスモス畑で愛を語り合ったあの時から。


殺したい程、愛してた。


レイチュルはエドワーズの左胸にこびり付いた血を舐めた。

濃い鉄の味が口の中に拡がる。

血は腐るのが早い。

鉄の中に潜む不快な、苦いような酸っぱいような味。

だが、嫌ではない。

今度は傷口を啜ろうと身を乗り出した。


コンコン

突然のノック。

レイチュルは素早く反応して、入り口を睨んだ。

寝室の入り口のドアは開いていた。

「御取り込み中、失礼したね」

入り口にもたれかかり、腕を組んでこちらを見ていたのはギンジ・ニノミヤだった。
地球生まれの日系月人だ。

「そんなに抱いて欲しかったんならどうして殺した?殺したい程愛してたってヤツか?」

執務室の光を後ろに背負ったニノミヤの表情は伺い知れなかったが、笑っている事は想像できた。

「俺の祖国でな、そういうのを『ヤンデレ』っつうんだ」

「勝手に入ってきてどういうつもり」

はだけた胸を両手で隠し、レイチュルは精一杯の強がりを言った。

「神聖ロシア帝国の宣戦布告だ。“串刺しエカチェリナ”率いる近衛騎士団がワシントンに乗り込んだ」

「ロシアが?……案外早かったわね」

「想定の範囲内だろ?」

「もちろん」

事実、ロシア帝国の参戦は当初の想定より二ヶ月程遅い。正直言って痛くも痒くもない。

「それはそうと、【計画】の方は首尾良く進んでいるの?」

レイチュルはこれが一番気になっている。

「問題ない。アポロの【適合者】がアキ・シラユキじゃなかったのは意外だが、手は打ってある」

「というと?」

「アイ・ナギラの消息が掴めた。数日前にアキ・シラユキと接触してる」

アイ・ナギラ。地球で撃ち殺されかけた自分を救った命の恩人であり、能力者である。
飄々とした性格でフラフラとどこかへ行ってしまったのだった。

「アイをどうする気?」

「事の次第によってはとっ捕まえる。教育すれば使い物にはなるだろ」

「……」

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