4の呼吸 3-5
教頭の説明は思ったよりも時間がかかった。そのことに腹が立っていた由美は自らの腕時計を見た。
はぁっ・・・・
と自然とため息が出た。来てから二時間もかかっている。彼女にとって一日のうちの二時間は大きいものだった。
由美は会社を辞めてから新たに個人投資家という方向に活路を見出だしていた。
自宅まであと数百メートルというところの赤信号に捕まり、由美はふと我にかえった。
後ろを見ると、楓が俯いていた。ここまでの帰り道で自分のことばかり考えていたので、楓のことをすっかり忘れていたのだ。
「楓、どうしたの?疲れちゃった?」
楓はかぶりを振った。そして由美に投げかけた。
「また、トウシの話?」
由美は楓の皮肉めいた一言に少し不意を突かれた。同時に、あなたのためにやっているのに、という苛立ちも募った。
「違うわよ。楓ちゃんの将来のことよ。」
「そう。」
と楓が一蹴すると、二人はこれ以上会話を交わすことはなかった。
信号が青に変わると、先程まで後ろを歩いていた楓が先に歩き出した。
いつしか二人の間には距離が出来はじめていた。そのことに、由美は納得いかなかった。
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