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嘘と嘘のあいだ

[597]  山本たかこ  2008-09-25投稿
1分が1秒がこんなに長かったなんて知らなかった。

あたし今ここで何やってるんだろう。
あたしどうして、待ってるんだろう。

待つだけがこんなに辛くて苦しくてみじめな事なんて知らなかった。

これはいつまで続くの?
今が最初で最後なの?
お月様、どうかしってたら教えて。もう、武志は帰って来ないの?

待つだけしかできない苦しみを体ごと何かに吸い込まれたならどんなに楽だろうか。

そのまえに、何も考えず、ただ眠る事ができるのならどんなにしあわせだろう。 朝目が覚めて武志が何事もなかったかのように横に居て眠ってくれてたなら、、

いつになく不安にかられるのは、それはもうないよって知ってるあたしがもう一人いるような気がするから?

とうとうあたしの声が響かなく届かなくなってる気がするから。
せめて、今この瞬間だけは明日からの真実を都合のいい嘘のままで

そのSignなの?お月様はただ静かで


今夜は帰らないと決めていた。桜木町で待ち合わせてた優子を車に乗せたら、携帯の電源を切り、そのまま明日を迎えようと決めていた。
優子もそれを望んでるだろう。優子が断ったら、、一瞬過ぎったが、それでも今夜は帰らないと俺は決めていた。

初めての無駄外泊だった。百合と一緒に暮らすようになって初めての、、
百合との3年間が明日の今頃には、昨日と違う事になってるかもしれない
違う明日になってしまうかもしれない

今、引き返せば違う明日にはならないかもしれない。
だけど、俺の右足はアクセルをふみつづけていた。

ブレーキは赤信号にしか反応しない。

踏みたくないブレーキだった。ふみつづけるアクセルだった。これが俺の本音なのか?

あの日百合が俺に言った声が頭中に響くよ。
百合が言った言葉がブレーキを踏ませないでいる。 俺は、あれから百合の声を聞きたがってない。
百合の声が全部あの言葉に置き換わってしまう。

俺は、疲れてたかも知れない。違う声を体に取り込みたかっただけかも知れない。

優子が立っていた。優子が少しはにかんだ。 優子は知ってるのかも知れない。今晩のこれからを。
俺と百合のこれからも。月のあかりはやけに静かだった。優子の体に答えを委ねようとしてる俺へ何か言ってるようだった。

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