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奈央と出会えたから。<233>

[546]  麻呂  2008-09-26投稿

カチャッ―ー‐



バタンッ―ー‐



ドアを開閉する音がした。



ミズホさんが部屋から出て行ったんだ。


聖人の胸に顔を埋めているあたしは、



ミズホさんに感謝の言葉も伝えられなかった。



明日、学校へ行ったら、ミズホさんにお礼を言わなくちゃ。


一緒に、バレンタインチョコ作りをしてくれたコトと、



聖人に旨く言いたいコトを伝えられる様に協力してくれたコト――



あたし、本当に本当に、今日はミズホさんに感謝してるんだ。



『ミズホ‥‥出て行ったな。』



『うん‥‥。』



あたしの背中に回された手が、今度は頭の上に乗せられ、



そして――



ゆっくりと優しく撫でられた。



キュンッ――



胸がキュンッと鳴るのを感じた。



『何で黙ってたの?!ビョーキのコト。』



ふと投げ掛けられる素朴なギモン。



『‥‥うん。ごめんね。心配掛けたくなかったから‥‥なかなか言い出せなくて‥‥‥。』



聖人の胸の中に顔を埋めていたあたしは、



自分の心の中の思いを今、全て吐き出すコトができ、安心したのか、



何だか、ふうっと涙腺が緩み、



思わず泣けてきた。


聖人に泣いているのがバレたら、



また心配掛けちゃう‥‥。



涙‥‥止まれっっ!!





『今度、息苦しくなったら‥‥直ぐに俺を呼べよ‥‥。何時でも、お前のトコ‥‥助けに行ってやる‥‥‥。』



そんなに優しい言葉掛けないで‥‥‥。


そんなに優しい言葉を掛けられると――


掛けられると――



涙――



止まらなくなるよ――



『‥‥‥ヒック‥‥‥‥。』



涙を堪えようとしていたら、



しゃくり上げてしまった。



聖人は何も言わず、あたしの頭を撫で続けた。



まるで、小さい子の様に――



あたしは聖人に甘えていた――



そして――



聖人の胸の中で泣いていた――





『‥奈央‥‥。お前の痛みは、俺の痛み。
‥‥愛してるぜ。』


2人だけの広い空間で――



2人だけのトキの流れが静かに通り過ぎて行った――

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