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星の蒼さは 123

[451]  金太郎  2008-10-01投稿
中国国内に怒濤の如く傾れ込んだ神聖ロシア帝国軍は各地の中国軍を激しく攻撃。
かつての同胞(?)の奇襲を受けた中国軍はあっという間に要所を落とされ、和平を求めた。

米露連合軍としてもこれ以上の戦闘は望むところではなく、ロシア帝都モスクワにて和平が成立。

中国には新政府が置かれ、これから共に『月』と戦う事が正式に確認された。

地球における世界規模での権力闘争が一応の終結を見るに及び、いよいよ『月』を倒す時、の気運が高まり始めた。

アメリカ大統領ハワードの呼び掛けにより、世界各国の首脳がワシントンに集結していた。






『ワシントンには現在、世界各国の国と地域から代表が集結し、対月方針を話し合います。なんと神聖ロシア皇帝ウラジミール七世も会議に出席する予定であり、注目が集まっています。昨年、病に倒れて以来ほとんど公の場に姿を現さない……』

金髪のテレビキャスターが淡々と読み上げている。

齢八十と高齢のウラジミール七世だが、今だに求心力を失わず、優秀な息子達の支えもあって、ユーラシアの七十%という広大な北の大地に君臨し続けている。


バチン


と、ハーケン・クロイツはテレビを切った。

ウラジミールが今なおも皇位につき続けている理由。

それは権力だろう。

世界の陸地の三割を己の足下に跪かせているという優越感が彼の肉体を生に貪欲にさせているのだ。

醜い。だが、実にヒトらしい。

「だが皇帝」

呟いた。

「地にへばり着いていては人を跪かせる事はできても、星を見下す事はできない」

夜のワシントンの、まばゆい光を見下ろしながら、クロイツはグラスのウイスキーを飲み干した。

「我が女王は、そんな玉座に興味等ない」

レイチュル・ケネディという名の壮大な計画。その一部に自分が組み込まれている。酒とはまた違う快感を覚えた。

「アキ・シラユキ。貴女もまた、この素晴らしき喜劇の出演者の一人。せめて滑稽に【天使】を演じてくれ給え。もう一度見せてくれ、絶望という【白】を」


あの日見た、真っ白な絶望。天使【ミカエル】。

もう一度見たい。

だから軍人としての肩書きを捨ててまで買って出たのだ。

超高層ホテルの最上階から見える戦艦群。

その端にポツリとある巡洋艦あおかぜ。

マシンガンのマガジンに弾丸が装填されている事を確認すると、外に出た。

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