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奈央と出会えたから。<252>

[554]  麻呂  2008-10-19投稿
* * * * * *

聖人のバースディプレゼントは――



あたし、聖人の絵をたくさん描いたんだよね。





『聖人あのね。あたし、色んな聖人を描いたよ。はいこれ。プレゼント。』



春休みに入ってから、



ずっと描いてたんだ。



色んな聖人。





『奈央の絵?!俺を描いてくれたんだ?!』



聖人は、少し照れた様な表情で、



あたしの手から、スケッチブックを受け取った。



『スケッチブックのままでプレゼントしたかったの。』





プレゼントとして渡すには、どうかと思ったケド、



額などには入れず、スケッチブックのまま、



あたしは聖人に絵を手渡した。



聖人は、あたしの手からスケッチブックを受け取ると、



早速、中を開いた。




『‥‥俺がいっぱいいる‥‥‥。』



1ページ‥‥2ページ‥‥‥3ページ‥‥‥‥。』



聖人がスケッチブックをめくっていく。


『ど‥‥どうかな‥‥‥。』



真剣な表情で、1ページずつゆっくりスケッチブックをめくっていく。





『すげぇ‥‥‥。』


聖人は一言そう呟くと、



更にページを進めていく。





『あはっ。色んな表情の聖人を描いてみたんだ。』



いつものクールな聖人。



笑っている聖人。



怒っている聖人。



悲しいトキの聖人。




このスケッチブックの中には、



色んな表情の聖人かいる――





『何か‥‥恥ずかしいな。俺、いつのまにお前に、こんなに見られてたの?!』




そして、



あたしの目の前には笑っている聖人がいる――



『好きなヒトの色んな表情を知っておきたいから‥‥。』



自分で言った言葉なのに、



何故か顔が熱くなる。



『お前の絵。俺、すげぇいいと思う。

将来は、そっちの道へ進まねぇの?!』


スケッチブックを見ていた真剣な眼差しが、



あたしの方へ向けられる。



『うん。一応小さい頃からの夢はあるよ。』



『何だったの?!』


『絵本作家。』



それは、



初めて聖人に自分の夢のコトを話した瞬間だった。

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