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航宙機動部隊前史後編・19

[564]  まっかつ  2008-10-21投稿
当然ながら、銀河連合中枢は、この稀代の名将を恐れ、警戒し、彼から実権を奪い、あわよくばその政治生命を断とうともくろんでいた。
そして、彼等はその工作を巧みに実行し、確かにガニバサは職権の八割以上を無力化・制限下に置かれてしまっていた。
それでも銀河連合側のガニバサに対する猜疑は消えなかった。
《明の燕王》―かつて古・地球時代に同じく中央から警戒され、遂には挙兵して王朝を奪ったとある東洋の王子に、ガニバサは何時しかなぞらえられていた。

それでも忍耐に忍耐を重ねるガニバサに、銀河連合中央機関は、最後通帳を突き付けて来たのだ。
―貴殿の元部下であるトマス=メッツイァが、我が連合に対する反乱勢力の一つを率いてこちらの軍人と民間人を殺害に及んだ
貴殿は身の潔白を証明すべく直ちに彼を討伐し我々に引き渡せ
さもなくば貴殿の全役職を剥奪し中央に召還する!―\r

明らかな挑発・恫喝であり、それは《踏み絵》以外の何物でもなかった。
屈服すれば、今まで労苦を共にして来た将兵全員を見捨てる事となり、拒絶すれば、部下以外の全銀河を敵に回す羽目になる。
ガニバサは追い込まれた。

この時点で、彼の所有する兵力は、直属三00名に過ぎなかった。
ここまで彼の勢力を削いだからこそ、銀河連合は強気に出れたのだった。
だが、ガニバサは最後通帳の拒絶を決意し―秘かに挙兵の計画を練り始めた。
全銀河に散らされ転属させられた彼の旧部下・同じく至る所でゲリラ戦を続けている元軍人反乱勢力―これ等を糾合し、指揮出来る能力とカリスマを持っているのは、この時代ではガニバサしかいなかった。

ガニバサはまず、彼の駐留するアイアン=トライアングル要塞群を手に入れるべく、隠匿されていた《ソンジャタ=ケイサ》―銀河最大最強の超弩級戦艦―に乗り込んだ。
当たり前だが、アイアン=トライアングル要塞群といっても、その中核は、銀河連合の息のかかった者で占められていた。
ガニバサに対する監視体制は厳重を極めていた。

だが―ガニバサの行動を予期していた銀河連合機関上級議員・同郷人のウェルパニは、既にこう評していた。
『彼は鰐に呑み込まれても復活する男だ。増してや、旧敵地に置いとく何て未来の帝王を育てる様な物。
名誉職を与えて中央で贅沢な生活をさせて骨抜きにすべきなのに…』

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