―Never Land― 5.
ナガセは手渡されたマグカップを冷ややかに見下ろした。
イェンは自分のカップを手にテーブルの向かいの席に座り、さりげない調子で口を開いた。
「飲むといい。気分が落ち着くから」
「…ココアで?精神安定剤の方が確実なんじゃないの」
イェンの穏やかな眼差しが、逆にナガセの胸の内にザワザワとしたさざ波をたてていた。
何故だか、眼鏡の奥にあるそのトパーズの様な瞳を台無しにしてやりたくなって、意味も無く彼に反抗した。
「嘘じゃないさ。私も子供の頃、兄弟と喧嘩した後は温かいココアを飲んで仲直りしてたんだ」
「そんな単純な子供と一緒にされたくない」
にべも無い態度に、イェンは苦笑した。
「確かに単純だったな。玩具の取り合いだったり、夕飯のオカズの取り合いだったり、さすがに女を取り合った時はココアは効かなかったけど」
イェンはその話に一人で笑い、ココアをすすった。
「その人どうかしたの?」
ナガセの口から問いが漏れた。
あまりにたわいも無い話にウンザリしたのかと、イェンが正面を見ると、その子供は探るような眼で彼を見ていた。
「どうもしないよ。喧嘩別れしただけさ」
ナガセは、そう、と短い感想をこぼし、それきりまた不機嫌に黙り込んだ。
その様を見据えながら、イェンが静かに聞いた。
「君は、両親に会いたくはないの?」
「どうして?あなたが、兄弟に会いたいから?」
そう切り返したナガセの表情には、子供特有の無邪気さは何処にも無く、冷たい刃に似た鋭さを感じさせた。
イェンは自分のカップを手にテーブルの向かいの席に座り、さりげない調子で口を開いた。
「飲むといい。気分が落ち着くから」
「…ココアで?精神安定剤の方が確実なんじゃないの」
イェンの穏やかな眼差しが、逆にナガセの胸の内にザワザワとしたさざ波をたてていた。
何故だか、眼鏡の奥にあるそのトパーズの様な瞳を台無しにしてやりたくなって、意味も無く彼に反抗した。
「嘘じゃないさ。私も子供の頃、兄弟と喧嘩した後は温かいココアを飲んで仲直りしてたんだ」
「そんな単純な子供と一緒にされたくない」
にべも無い態度に、イェンは苦笑した。
「確かに単純だったな。玩具の取り合いだったり、夕飯のオカズの取り合いだったり、さすがに女を取り合った時はココアは効かなかったけど」
イェンはその話に一人で笑い、ココアをすすった。
「その人どうかしたの?」
ナガセの口から問いが漏れた。
あまりにたわいも無い話にウンザリしたのかと、イェンが正面を見ると、その子供は探るような眼で彼を見ていた。
「どうもしないよ。喧嘩別れしただけさ」
ナガセは、そう、と短い感想をこぼし、それきりまた不機嫌に黙り込んだ。
その様を見据えながら、イェンが静かに聞いた。
「君は、両親に会いたくはないの?」
「どうして?あなたが、兄弟に会いたいから?」
そう切り返したナガセの表情には、子供特有の無邪気さは何処にも無く、冷たい刃に似た鋭さを感じさせた。
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