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―Never Land― 10.

[596]  ケィ。  2008-10-26投稿
 部屋中に鬱蒼と生い茂った植物に、思わず足が止まった。

 ナガセはその中で、平然とノートパソコンのキーを叩いていた。

「散らかってるけど大丈夫だよ。上がって」

「…散らかってる、ねぇ。ますます散らかっていくみたいだけど、いいのかい?」

 植物達は話している間にもその根や枝をどんどん伸ばし、増殖し続けていた。

「大丈夫。明日には枯れるから」

 ナガセは自分に絡みつく根をそっと払い、キーを打った。
 イェンは、疑問点の多さに何から尋ねるべきか迷った。

「…これも君が作ったの?何の為に?」

「僕が作った。僕の為に」

 まともに答える気は無いらしかった。それでいて大真面目なのだから、イェンにはお手上げだった。

 仕方なく、別の話題を持ち出した。

「君はもうすぐ誕生日だろ?何か欲しいものはないかい?」

 ナガセは画面から目を離し、イェンを睨んだ。

「そうだね。試験管の中にいた僕が、外に取り出された日だ。
せっかく忘れてたのに、教えてくれてありがとう」

 ナガセの心底厭わしそうにしているのにも動じず、イェンは穏やかに言った。

「誕生日には贈り物を貰うべきだ、と私は思うよ。
祝ってくれた人の心を大切に胸にしまって、また次の一年を過ごすんだ」

「…それがイェン流の誕生日ってわけ」

 ナガセは大きくため息をついた。

「欲しいものなんか無いよ。何処にも無い。…だから僕は、何かを造りたくなるのかもね」

 そこに在ったのは、倦怠と孤独。

 ナガセは、言葉よりその裏に有るものに敏感で、容易には他人の言う事を受け入れなかった。

 この言葉も、ナガセには届かないかも知れない。そう予感しながらも、イェンはそれが芽吹く事を願い、言葉を紡いだ。

「ナガセ、外に出てみないか?今すぐじゃなくていい、いつか。
色々な物に触れて、何気ない風景を大切にして…、まだ人に触れるのは怖いかも知れないけど、君が何かを愛するなら、一人でも孤独では無くなるはずだよ。…」


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