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―Never Land― 12-0./物語ハ未ダ終焉ヲ知ラズ

[622]  ケィ。  2008-10-26投稿
 幸福というものがほんの些細な一時に過ぎないなら、時が残酷にそれを遠ざけるなら、何度でも思い出せばいい。
 何度でも、繰り返せばいい。
 何度でも、生まれ直せばいい。
 何度でも、造りあげよう。

 そこに、なんの咎がある?
 この命さえ、マガイモノなら。

「また、一緒に暮らそう?
その為なら、僕は何だってする。僕らの世界を守る為なら、何だって。…」

 ディスプレイの表示が物凄いスピードで流れて行く。画面が、青から赤へと変化した。その光によって、室内も赤く染まる。コードが、血管のように脈打ち出す。

カプセルに、液体がゆっくりと充たされて行く。その浮力に身を任せ、ナガセは胎児のように膝を抱き、逢いたい人をイメージする。
 強く、強く、思い描く。

 願うように。

 祈るように。

 何度も、何度も。…





 いつしかまた、ディスプレイは青白い光を放っていた。
やがて、暗い室内から、コポコポ、と音が響く。温かなココアから立ち上る薫りが、辺りに満ちて行くような気がした。

「そろそろ終りにしたらどうだい?」

 カプセルのガラス越しに聞こえる穏やかな声に、頬が、噛み締めていた顎の筋肉が弛んだ。
 涙が溢れそうだった。

――嫌だよ、イェン。

終りなんて、いらない。





















『ナガセ、外に出てみないか?いつか…』


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